前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
9月3日 「お父さんのバックドロップ」を観てきました。
 
強い陽射の中にも、秋の気配を感じるようになりました。
その「気配」がなんだかさみしい、この頃です。

今日ご紹介する映画は「お父さんのバックドロップ」です。
原作者である中島らもさんは、こんなコメントを寄せていました。
「『たのむ。3分間でいい。客電をつけないでくれ』と思った。溢れ出る涙で顔がぐしゃぐしゃになっていたからだ」
楽しくて、とても爽やかな映画です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お父さんのバックドロップ」

どんな人かと、ドキドキしたのを覚えてる。
ウワサでは、なんかすごいことになっていた。
「2000人を束ねた暴走族の総長らしいよ」
ひょえぇ。びびる。
だってわたしは、 スカートは膝丈、門限は夜の9時。
好きになった男の子は、ハンドボール部だったし。。。
健全を絵に書いたような、古き良き高校生だったのです。
ワル(って言い方もどうかと思うけど。)とは縁遠く、
この先もワルくはなれないであろう私とは、ふぅぅぅーーんと遠い人、と思っていましたが。
一目見て、肩の力が抜けました。
いたずらっ子みたいな目をして笑っていたのは、
宇梶剛士さん。
今日見た映画の主人公です。

「新世界プロレス」のプロレスラー・下田牛之助(宇梶剛士さん)を父に持つ、
小学生の一雄(神木隆之介くん)はプロレスが大嫌い。
クラスの友だちにも絶対秘密にしておきたい。
ところが、お父さんは悪役に転向してしまうし、
クラスの友だちにもばれてしまう。
お父さんなんて、大っ嫌い!!
愛する一人息子の尊敬を勝ち得るために、父はある戦いに挑むのです。

こってこてな大阪南部が舞台。
父と子を取り巻く環境や人々が、最高に人間味に溢れている。
おじいちゃんは、とぼけた感じがなんとも言えず、と思ったら
チャンバラトリオの南方さんで、
覇気の全くない床屋のおじさんは、原作者でもある中島らもさんだ。
焼肉屋のおかみさんも、はすっぱなんだけど一生懸命で可愛らしいし、
一雄の友達、哲夫くんは、妙にませた物の言い方が絶妙に可笑しいったら。
なんというか、魅力的なのだ。どうして?と思うくらいに。
その答えは、パンフレットに書いてありました。
監督いわく「演出は全てジャリの頃の体験に根ざしている」と。
ワルかったんだろうな、この監督(笑)と思いつつ、
だからこそ、こんな風にちょっと欠けたところもあるけれど、
最高に魅力的な人々が登場するのだろうと。
きっとこんな環境が人が実際に存在するのではないかと思うほど、
リアルで、近い。
大阪の空気がそのまま真空パックで送られているような、フレッシュさが
見ている側を積極的にさせる。
客観的になんて見ていたくないのだ。
本気でげらげら笑って、泣いていたい。
それにしても。
涙しながら笑うのって、息が上手く吸えなくって、ちょいと苦しい。


宇梶さんと、BS朝日の「クイズ!人生ゲーム」でご一緒していますが、
番組の初回収録は、一本6時間かかり、
二本撮りで計16時間くらいかかってしまいました。
宇梶さんは、カメラの回っていない合間に、ちょっとだけ深刻そうな、
辛そうな表情を一瞬するので、気になっていました。
後日、宇梶さんのマネージャーさんから聞いたところ、
この映画の撮影で腰をひどく痛め、「人生ゲーム」初回の収録では立っているのも辛い状況だったそう。
しかも、収録は長時間に及び、マネージャーさんはこのとき後遺症も覚悟したそうです。
しかし、宇梶さんは立っていました。一言の弱音すら吐かずに。
強くて、優しくて、温かくて、ほんとに、お父さんの牛之助みたいな人なんだ。

明日、収録でお会いしたら、
お父さんって呼んでみようかな、わたし。
実家にやってきた、チワワのマロンです!

   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー