|
|
|
 |
|
私の最初の記憶は、母親のロングスカートの中からそっと見た、家の廊下。
感じていたのは、ぬくもり、だった。
人の肌の温度。
母親から始まったこの記憶は、今も誰かへとつながっていく。
映画を見たとき、あの「体温」を感じたのだ。
|
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ゲロッパ!』とは。
ソウルの帝王、ジェームス・ブラウンの名曲「セックス・マシーン」の歌詞、”Get up!”
のこと。刑務所への収監を数日後に控え、ヤクザの組長はやり残したことがある。
ひとつは、25年前に生き別れになった娘に会うこと。もうひとつは、心酔するジェーム
ス・ブラウンの来日公演に行くこと。組長の願いを叶えるため、子分たちがJBを
誘拐しに行くのだが・・・。
物語の舞台・名古屋の蒲郡で、人もストーリーも、一気に集結していく。
小気味よい、スピード感で。
あの「体温」はどこからくるものだろう?
漠然と感じるこの気持ちに答えをくれたのは、監督でした。
8月9日深夜に行われた、『ゲロッパ!』先行公開での監督とのインタビューで。
『ゲロッパ!』で伝えたかったのは、「信頼関係」だと。
「例えば、いるでしょう?お金を借りても返さない奴。そいつがどんなダメな奴でも、
信頼しているでしょう?嘘をついたとか、裏切ったとか、そんなことを越えて
信頼している奴が。そういうつながりを書きたかったんですよ」
血のつながりを越えた、人と人との絆。信頼関係。
監督はそう言いました。少しうつむき加減で照れながら。でも、しっかりと。
監督の言葉に、想いを馳せる。
大事にしたい人たちのこと。
傷つけたこと、傷つけられたこと。
愛したこと、憎まれたこと・・・
これまでに、いろんな人に出会い、さまざまな感情が流れた。
そして、今の私がいる。
過去の、今の、大事な絆に支えられて、ここにいる。
その信頼関係は目に見えないけれど。
ただ、感じるのだ。ぬくもりのように。
自分を支えているものはシンプルなのに、いろんなことに捕らわれ、躓き、
悩んでいる。
仕事、人との関わり、自分のこと・・・。
いつの間にかこんがらがっていることだってしょっちゅうだ。
映画を見て、はっとしたのだ。
あの「体温」が心を包む。
自分を成り立たせているものは、人との絆。
こんがらがっていたものが少しずつほどけていく。
大事なものを忘れていないか?
感じる心は生きているか?
シンプルでいるか?
窮屈になっている自分へ。
“Get up!”
■作品データ/『ゲロッパ!』
監督:井筒和幸
脚本:井筒和幸、羽原大介
照明:渡邊孝一
美術:大坂和美、須坂文昭
音楽:高宮永徹
出演:西田敏行、常盤貴子、山本太郎、岸部一徳、ラサール石井、篠井英介、他
配給:シネカノン/2003年/日本/112分
※8/16(土)よりロードショー■『ゲロッパ!』公式サイト
http://getup.so-net.ne.jp/
|
|
■この映画情報はテレビ朝日のメールマガジンa-friens で皆様のお手元にも配信されます。
会員登録はこちらへどうぞ。http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/contents/magazine/cnm.html
|