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8月7日 『くたばれ!ハリウッド』をご紹介!

人が語る言葉には、限界がある。

平和に生きてきた、27歳・独身・女、は時々困ることがある。
「生」の言葉は、過ごしてきた人生の密度と比例する。
自分の身を切って生まれてきた言葉たちにかなう、借り物の言葉なんて、ない。
だからこそ、あぁ、とため息が出るときがあるのだ。
語るべき言葉が、今ここにない。

例えば、
禁煙しはじめた人がニコチン不足で苦しんでいるときに、励ましてあげられる言葉は?
(わたしは、たばこを吸わないのだ)
足が地面にめり込みそうなほど落ち込んでいる人に、寄り添っていられる言葉は?
(どれくらいの悲しみを共有してあげられるのだろう。。。)
不幸すらも覚悟する、強烈な情熱に向き合っている人に、投げかけられる言葉は?
(きっと情熱の余熱ですら、わたしには熱いはずだ)

言葉の限界を突き破るのは、過ぎた時間の長さではなく、経験の重みだ。

『くたばれ!ハリウッド』には、珠玉の言葉が詰まっている。
『ゴットファーザー』を生んだ伝説のプロデューサー、ロバート・エヴァンズの栄光と挫折、
そのドキュメンタリー。
エヴァンズ自らのナレーションで、実際の写真とフィルムにより、人生が語られる。
『ある愛の詩』を大ヒットさせ、その主人公、アリ・マッグローを妻にする。
記録的な大ヒットを連発し、『ゴットファーザー』でオスカーを受賞。
愛する妻との別れ。数々の浮名。
思いもよらぬ事件に巻き込まれた暗黒の時代・・・、そして復活。

こう書き上げていくだけで、彼がいかに密度の濃い時間を過ごしていたかは、容易に
想像がつくだろう。
この人生模様にはさまれる、ロバート・エヴァンズのナレーション。

「ツキは偶然にはやってこない。準備と好機が出会うときに訪れる」
「映画作りの基本に戻らなければならない。脚本がダメなら、映画もダメ」
「一度しかないチャンスなら大勝利をつかみとるか、惨めな敗北か。
人生に二度目はない」
「ペンという剣は人を葬る力さえ持つ。長年にわたり、剣によって私は
凄絶な目に遭ってきた」

経験が生み出す、この言葉のパワー。
自分のしてきたことに愛情を感じ、誇りを持ち、勝負に挑む。
ロバート・エヴァンズという一人の人間の人生に、ただただ圧倒され、巻き込まれ、
触発される。

淡々と綴られていく凄まじい人生。
エヴァンズは、自分の人生について一体どう思っているのか。

「私は死んでもいないし、裕福でも貧乏でもなく引退もしていない。今も現役だ。
映画に残りつづけていく」・・・

『くたばれ!ハリウッド』
この言葉はエヴァンズの叫びではないはずだ。
ショービジネスの厳しい世界、ハリウッド。
この世界に取り憑かれ、大きなうねりの中で上がったり下がったりしながらも、
エヴァンズは、この世界にいるのだ。
「35年以上も現役なのは、エヴァンズだけである」という事実。

タフな人生を生きていながら、彼がそこにいる理由は意外にシンプルなのかも
しれない。

自分の仕事を、心から愛している。

きっと、これが答えだ。

作品データ/『くたばれ!ハリウッド』
監督・製作:ブレット・モーゲン、ナネット・バースタイン
撮影:ジョン・ベイリー、A.S.C
原作:ロバート・エヴァンズ
出演:ジャック・ニコルソン、ダスティン・ホフマン、フランシス・F・コッポラ、ロマン・ポランスキー、アリ・マッグロー、ウォーレン・ビーティ、
ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン

配給:アミューズピクチャーズ/2002年/アメリカ/93分

※ヴァージンシネマズ六本木ヒルズで今夏ロードショー

『くたばれ!ハリウッド』公式サイト
http://www.kutabare.com/kutabare/

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