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人が語る言葉には、限界がある。
平和に生きてきた、27歳・独身・女、は時々困ることがある。
「生」の言葉は、過ごしてきた人生の密度と比例する。
自分の身を切って生まれてきた言葉たちにかなう、借り物の言葉なんて、ない。
だからこそ、あぁ、とため息が出るときがあるのだ。
語るべき言葉が、今ここにない。
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例えば、
禁煙しはじめた人がニコチン不足で苦しんでいるときに、励ましてあげられる言葉は?
(わたしは、たばこを吸わないのだ)
足が地面にめり込みそうなほど落ち込んでいる人に、寄り添っていられる言葉は?
(どれくらいの悲しみを共有してあげられるのだろう。。。)
不幸すらも覚悟する、強烈な情熱に向き合っている人に、投げかけられる言葉は?
(きっと情熱の余熱ですら、わたしには熱いはずだ)
言葉の限界を突き破るのは、過ぎた時間の長さではなく、経験の重みだ。
『くたばれ!ハリウッド』には、珠玉の言葉が詰まっている。
『ゴットファーザー』を生んだ伝説のプロデューサー、ロバート・エヴァンズの栄光と挫折、
そのドキュメンタリー。
エヴァンズ自らのナレーションで、実際の写真とフィルムにより、人生が語られる。
『ある愛の詩』を大ヒットさせ、その主人公、アリ・マッグローを妻にする。
記録的な大ヒットを連発し、『ゴットファーザー』でオスカーを受賞。
愛する妻との別れ。数々の浮名。
思いもよらぬ事件に巻き込まれた暗黒の時代・・・、そして復活。
こう書き上げていくだけで、彼がいかに密度の濃い時間を過ごしていたかは、容易に
想像がつくだろう。
この人生模様にはさまれる、ロバート・エヴァンズのナレーション。
「ツキは偶然にはやってこない。準備と好機が出会うときに訪れる」
「映画作りの基本に戻らなければならない。脚本がダメなら、映画もダメ」
「一度しかないチャンスなら大勝利をつかみとるか、惨めな敗北か。
人生に二度目はない」
「ペンという剣は人を葬る力さえ持つ。長年にわたり、剣によって私は
凄絶な目に遭ってきた」
経験が生み出す、この言葉のパワー。
自分のしてきたことに愛情を感じ、誇りを持ち、勝負に挑む。
ロバート・エヴァンズという一人の人間の人生に、ただただ圧倒され、巻き込まれ、
触発される。
淡々と綴られていく凄まじい人生。
エヴァンズは、自分の人生について一体どう思っているのか。
「私は死んでもいないし、裕福でも貧乏でもなく引退もしていない。今も現役だ。
映画に残りつづけていく」・・・
『くたばれ!ハリウッド』
この言葉はエヴァンズの叫びではないはずだ。
ショービジネスの厳しい世界、ハリウッド。
この世界に取り憑かれ、大きなうねりの中で上がったり下がったりしながらも、
エヴァンズは、この世界にいるのだ。
「35年以上も現役なのは、エヴァンズだけである」という事実。
タフな人生を生きていながら、彼がそこにいる理由は意外にシンプルなのかも
しれない。
自分の仕事を、心から愛している。
きっと、これが答えだ。
■作品データ/『くたばれ!ハリウッド』
監督・製作:ブレット・モーゲン、ナネット・バースタイン
撮影:ジョン・ベイリー、A.S.C
原作:ロバート・エヴァンズ
出演:ジャック・ニコルソン、ダスティン・ホフマン、フランシス・F・コッポラ、ロマン・ポランスキー、アリ・マッグロー、ウォーレン・ビーティ、
ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン
配給:アミューズピクチャーズ/2002年/アメリカ/93分
※ヴァージンシネマズ六本木ヒルズで今夏ロードショー■『くたばれ!ハリウッド』公式サイト
http://www.kutabare.com/kutabare/
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