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Vol.45 「ジャムパン」 (2003/09/04) |
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早朝勤務の後、たまに試写会に出かける。
先日観たのは、今秋公開の『阿修羅のごとく』(原作・向田邦子/監督・森田芳光)。
その中での、小さな一場面だった。
中村獅童さんと深津絵里さんのやり取り。
ほんの数分の出来事なのに、まるでひとつの絵画のように、私の中にずっとある。
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彼女がベンチでお弁当を広げている。
近くを通ったから、と彼はおそるおそる近付く。
意を決して、袋入りのジャムパンを半ば無理矢理に差し出した。
「ぼく、ジャムパン、好きなんです。真ん中を割ると、ジャムがちょっとだけ入っているのが、情けなくって…」
袋をぴりっとやぶいて、慌てて中身を二つに割る。
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透き通ったイチゴジャムが、ぱさぱさのパンに染みていた。
「情けないけど、好きなんです」
ジャムは少ないけれど、君に食べてもらいたい。
情けないぼくでも、知って欲しい。
食事中なのに、ジャムパンを渡す。
その強引さと、不器用さと、まっすぐな気持ちと。
不可解で一方的な行動は、何故か憎めない。
映画の中の彼女は、彼の気持ちに応えるのか、応えないのか。
私だったら…。
いつも寄っているコンビニに、ジャムパンはあっただろうか。
私も袋をぴりっとやぶいて、中身をふたつに割ってみよう。
自分でやってもしょうがないかな? |
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