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Vol.44  「アルプススタンド(2001年度版)」  (2003/08/23)

2年前の今頃は、毎日甲子園のアルプススタンドでリポートしていた。
新人研修が終わってすぐのこと。
その頃に書いた文章を、偶然見つけた。

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甲子園のアルプススタンド。
同じ場所でありながら、出場校のカラーやその土地の文化などによって、
毎回違う空気に包まれる不思議な場所です。

その昔、ある漫画家が、応援している白いシャツを着た学生たちの一団を見て、
「そのスタンドはまるでアルプスのように、頂上付近に白い雪を蓄えて
いるかのようだった…」と表現したことから、「アルプススタンド」と
呼ばれるようになったそうです。

ひょんなことから隣の人と言葉を交わすようになり、メガホンを借りて
一緒に応援したり、お弁当を分けて頂いたり。

それは、旅先の出会いに似ています。私はどこにも旅をしていないし、
いつも同じ場所に立っているのに、毎日日本のどこかがここにやってくるのです。

1日4試合。試合の後は、勝ち負けという明白な結果だけを残して、
アルプススタンドは一瞬で様変わりします。

夕方になると、浜風が吹きます。阪神甲子園球場がある西宮は海の町。
古くから栄えた港があり、この辺りにも自然の浜が残っていて、
時折潮の香りがやってくるのです。

アルプススタンドの最上段から見渡す風景。普段テレビ画面いっぱいに映る
スコアボードも、随分と遠くに見えます。むらさき色の雲と、明るすぎる
スタンドの照明。海鳴りのような歓声を夢見心地で聞きながら、
まるで『天空の城ラピュタ』のような球場全体を、眺めています。

私はそんな場所で、毎日リポートしています。チームを応援する色々な
人たちの気持ちを、その土地の風と共に伝えられたらと思っています。
(2001年8月17日)

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今後、リポーターとして甲子園を訪れることはもうないだろう。
それでも毎年、電車を乗り継いで必ず行く。
これからも、そうすると思う。

そう、あの海鳴りのような歓声。 
私は白球と同時に、当時の私を追っている。
真剣さがきちんと肯定されるこの場所を、許されるのならば「原点」と呼びたい。
   
 
 
    
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