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Vol.41  「洗濯」  (2003/07/20)

雨の日に洗濯機をまわす。
室内にだらりと垂れ下がった洗濯物。
部屋はいっそう狭くなり、湿気も気になる。
乾いた後の洗濯物は、ちっともふわふわしていない。

この光景には見覚えがある。
私が生まれた頃の写真だ。
なぜか背景にはいつも、室内干しの洗濯物が映っている。
当時の福岡は数十年ぶりの長雨で、しとしとと幾日も降り続いたそうだ。
毎日毎日、母は私の布オムツを洗濯しては部屋に干し、
それでも乾ききらないものはアイロンをかけて凌いでいたという。

写真を撮る時、みんなが「いい顔」をするように。
背景だって、その場さえ片付けたらきれいな状態を写すことが出来る。
でも、母はそうしなかった。
掃除を毎日欠かさず、家中拭いているほどきれい好きなのに。

祐子はここで大きくなったのよ。
大人になった時に、見て欲しいなって思って。

だから私は、雨の日の洗濯物を嫌いになれない。
湿った部屋は過ごしにくいけれど。

傘を開く。
道には、濡れて光っているアジサイ。
室内には円形ハンガーが開く。
生活するって、そういうことかな。
   
 
 
    
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