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Vol.40 「ハゴロモ」
(2003/07/14) |
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7月13日(日)
先日取材を受けた、サンケイスポーツのインタビュー掲載日。
当日の朝はコンビニに走り、くるりと丸まったサンスポを買った。
スタジオで紹介するスポーツ紙には、いつもアイロンがきれいに
かけられていたことに改めて気付く。
大きな写真にまずびっくりして、記事を読み進める。
そうそう、こんなことを話したなぁ。
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番組中に一人で考え込んで、止まってしまうときがある。コメントしようと思ったら、
既に次の話題に移っていたということもしばしば。
「情報を押し付けてはいけない。自分の意見を持つのは大事だけど、
それがすべてだと思うと世界が狭まる気がする」からこそ、一歩立ち止まる。
「バランス感覚を大事にしたいです。客観的に物事を見られる目を養いたい」。
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ふと、よしもとばななさんの小説「ハゴロモ」の一節を思い出した。
主人公が幼なじみの家に泊まりに行き、こんな話を聞く。
彼女は保母さんで、そこに通う男の子が鳩の雛を拾ってきて一生懸命育てていたのに、
鳩は浮浪者のおじさんに食べられてしまったという。
同じ生き物を、全く違う窓からみるとそうなる。
その子にとっては果てしない愛情の対象でも、おじさんには焼き鳥にしか見えない。
彼女は男の子に「あのおじさんは君と見ている世界が違うから、
自分の世界を大切にして、何度壊れても作り直してね」と言ったそうだ。
彼女は続ける。
「でも私だって、実のところ、もしもみんなが等しく鳩を愛するだけの
世界だとしたら、私はそこに住んで幸せだろうか?っていつでも考えてしまうもの。
別の考えに触れたときの感じは、やっぱりいつでも衝撃的で、
自分の世界が広がっていく気がするから」
私が保母さんだったら、男の子に何て言うだろう。
何て言えるだろう。
新しい世界を知る。自分と違う価値観がこんなにも混在することを知る。
知ると同時に、感じる。
必要なのは、その重みに耐えうる強さかな、と思う。
ふわりとしたハゴロモも、くるりと丸まった新聞記事も、軽くはない。 |
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