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Vol.32  「地下鉄」  (2003/04/16)

地下鉄の中で。
私はたいてい、広告を眺めている。
先日、妹と出かけた時も、二人して同じものに目が留まった。
「□いアタマを○くする」でおなじみ、ある進学塾の額面広告だ。

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次の短歌を読んで、後の問いに答えなさい。

「宙返り何度も出来る無重力(        )」

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宇宙飛行士の向井千秋さんが、
地球の人々に向かって「続きを作って下さい」と呼びかけた短歌。
これに続く「下の句」を完成させる、中学入試問題だった。

地下鉄の漆黒が、何となく宇宙を思わせる。

「地球上なら金メダリスト」と、妹。
「遊び疲れて星の上」と、私。

正解はインターネットのホームページで、とのこと。
家に帰るや、パソコンの電源を入れた。

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(解答例)宇宙じゃ僕もオリンピック選手

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「お姉ちゃん、私、正解!」
「サン・テグジュペリだったら、私に○をくれるかもしれないもん!」

二人で笑った。
心地よい悔しさが、棒アイスがはずれた時みたいに、はかなくも甘い。

12年前、姉妹でこの塾に通っていた。
   
 
 
    
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