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Vol.22  「ハーモニーホール」  (2003/03/04)

先週末、福井県でコンサートの収録があった。
空港から、バスで1時間。
きみどり色の早稲の中、白いコンサートホールは立っていた。

周りには何もない。
まっすぐ伸びたあぜ道と、等間隔の電柱。
つないだ電線は、楽器の弦にも見えた。
この場所から、音色がどこまでも伝っていく。

リハーサルの時、こっそり抜け出してあぜ道に出た。
オーケストラの音は、遠くまで歩いても聞こえてくる。

夕暮れ。
西日が差し込むと、世界の半分がオレンジになった。
いつの間にか音は止んでいた。

まるで草の中で見つけたオルゴールのようだ。
私はここを去ってしまうけれど、
明日になれば、きっと誰かがフタを開けに来る。
   
 
 
    
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