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Vol.21  「くす玉」  (2003/02/24)

父の忘れ物を会社に届けたことがある。
仕事場での、初めての父。
私に気付かず黙々と仕事をする姿に、
何故か「お父さん」と声をかけられなかった。

こんな歌詞を思い出した。
スピッツの歌で、ずっと気になっていたフレーズだ。

「くす玉が割れて 笑い声の中 君を見ている」

くす玉が割れて、笑い声の中で君を見ているのか。
くす玉が割れて笑い声の中にいる、君を見ているのか。

私は、後者だと思った。
君と一緒の場所にはいない。
離れたところから、でも確かに見ている。
色彩の紙片が散る、花のような場所を。

袖から見た舞台の上にも似ている。
真正面の客席には、座れない。
七色のくす玉には、近づけない。

光の中にいる大切な人が、こちらに気付かない場所。
でも、私はここからずっと見ていたい。
もしかしたら、見守るとはこういうことなのだろうか。
   
 
 
    
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