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Vol.20  「舞台の袖」  (2003/02/19)

オペラ歌手、ジョン・健・ヌッツォさん。
先日、「題名のない音楽会21」のゲストとしてお迎えした。
アメリカでのアルバイト生活、胸膜炎による入院を経て、
現在は、ウィーン国立歌劇場の専属歌手として活躍されている。

そんな彼が、一番大切にしていることがあるという。

「僕は、必ず涙が出るまで練習する」

本当に体に染み込ませると、必ず涙が出てくる。
それが音楽のミラクルだ、と。

衝撃だった。
涙が出るまで歌うなんて。
「続いて、ジョン・健・ヌッツォさんには…」
曲の紹介をした後、私は逃げるように下手に下がった。

琴線と涙腺が共鳴するまで、求め続ける。
私は司会者として、同じ舞台に立てるのだろうか。
立ってしまって、良いのだろうか。

体をも震わせる彼の歌声。
鳴り止まない拍手。
消えてしまいそうな自分。

涙が出てしまった。
舞台袖から、私は確かにそれを見た。
   
 
 
    
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