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Vol.46 「合コンプレゼン王」(2007/02/26・03/12)


合コン。
言わずと知れた、男女が親睦を深めるための飲み会である。

「いい人紹介してね」
「かわいい子連れてきてね」

対象は、独身者のみかと思っていたが…。
先日、参加することになった。

合コンプレゼン王。
深夜番組『虎の門』での、新企画である。
自慢の友達をスタジオの男性陣にプレゼンし、
誰の合コンが一番魅力的かを競い合う。
プレゼンターは、タレントのMEGUMIさん、医師の西川史子さんと、私。
紹介するプロフィールは全て本物で、芸能人やモデルさんは対象外とする。
友達の顔は一切公開せず、プレゼン優勝者のみ、写真を男性陣に披露するという設定だ。

優勝出来なかったら、友達には魅力がないということ?
優勝出来ても、顔写真を見た時にがっかりされたらどうしよう。
悩んだ末に、妹と、お世話になっているスタイリストさんを紹介することにした。

まずは、プロフィールを作成する。
アンケート用紙に“好みのタイプ”などを記入して提出すると、
すぐさまディレクターから電話がかかってきた。
「スタイリストさんは問題ないのですが…妹さんが、ユニークすぎるというか…」

訂正箇所は、以下の通り。

似ている芸能人:
南海キャンディーズの山ちゃん(山里亮太さん) → 女性でお願いします
趣味:
ガンダムのプラモデル作り → 女性的なものでお願いします


プロフィールを再考するため、
仕事帰りの妹を連日誘っては、深夜の喫茶店で作戦会議を開いた。
「得意料理は?」
「モツ鍋!」
「渋すぎる!もっと、肉じゃがとか作らないの?」
「お姉ちゃん、分かってないなぁ。モツは、下ゆでが難しいんだよ」
“モテる女性”に近づけるべく誘導尋問するのだが、
妹はなかなかそちらの方向に行ってくれない。
男性の大多数が求める、最大公約数としての所謂“かわいい”の定義。
「最近は、ちゃんとお化粧するようにしているし…」
足元も、スニーカーからロングブーツに変わった。
慣れずに、ひょこひょこ歩く姿を見ると、なんだか胸がいっぱいになる。

結局、私が型にはめてしまっているのではないか。
でも、紹介するからには、彼女の良さを最大限引き出してあげたい。

オンエアは、もう明日に迫っていた。


顔写真の代わりに、
持ち物の写真を公開します

 
 
  アンケート用紙には、
「理想のタイプ」や「彼氏いない歴」などの項目が

「合コンプレゼン王!」
いとうせいこうさんの高らかな一声で、オンエアが始まった。

私が紹介するのは、スタイリストさんと妹。
お洒落でスタイル抜群のスタイリストさんが勝ち抜けば、二人目として妹を紹介することになるのだが…。
ガンダム好きで山ちゃん似の彼女のプロフィールが、男性の好みからおよそかけ離れていると指摘されてしまったのは、放送も差し迫った頃だった。
スタッフ側からのアドバイスで、似ている芸能人を山ちゃんから上戸彩さんに変えたものの、一抹の不安は拭えない。

「では、早速一人目のお友達を紹介してもらいましょう!」

まずは、スタイリストさん。
柴咲コウさんに似ている彼女には、そっくりの双子のお姉さんがいる。
「彼女と合コンしたら、もれなく美女がもう一人ついてきます!」
あぁ…言い方を間違えた。これではまるで、通販番組みたい。
可愛い、素敵、エトセトラ。言葉を重ねるほどに、伝わらなくなってしまう。

そんなひらひらレースの文言も、西川史子さんの一言で吹き飛んだ。
貫禄たっぷりに、すっと立ち上がる。
しばしの静寂。


「日本一のナース、見たいですか?見たくないですか?」


…。
プレゼンターの私も、思わずこくりと頷いた。

案の定、スタジオは「見たい!見たい!!」の大合唱。
絶妙の「間」と、有無を言わさぬ説得力。
桃色の殺し文句である。
この一言で、勝負がついたのは言うまでもない。

優勝は、満場一致でナースの友達を紹介した西川さんに決まった。
私は予選敗退となり、妹を紹介するまでには至らなかった。

如何にして、その場にいない本人を魅力的に紹介するか。
つまりは、プレゼンター次第であるという事実。
「合コン王」ではなく、あくまで合コン「プレゼン」王であった。

悔しいというよりも、申し訳ないという気持ち。 
ガンダムも山ちゃんも、全然悪くなかったのにね。



趣味の「プラモデル作り」を、「料理」に変えたのですが…残念!


(「日刊ゲンダイ 週末版」2月26日・3月12日発刊)
   
 
 
    
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