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Vol.47 「年金分割とあんぱん」(2007/04/09)

すっかり、初夏でした…。
「新年度のご挨拶を」と思いながら、随分と遅れてしまってごめんなさい。

担当番組に、少しの変更がありました。
水曜日と木曜日に早朝ニュース、
『スーパーJチャンネル』では、金曜特集のリポーターを担当しています。


朝3時起床!久しぶりに、目覚ましうさぎの復活です

『スーパーJチャンネル(土日)』と『虎の門』は、二年目になりました。



『スーパーJチャンネル』オンエア後、山口さん、デスクの岡田さんと。
現場からスタジオから、最新のニュースをお伝えします


さて、今回のコラム。
季節は戻って、報道フロアから春の話題です。

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4月1日。
私は銀座の歩行者天国にいた。マイクを持って。
暮らしの制度が大きく変わる節目の日。中でも、社会保障。
年金分割制度が始まることで、離婚した時に妻は夫の厚生年金の最大半分まで受給することが出来る。
「今日帰ったら、テーブルに離婚届が置いてあったりして…」と、デスクが言う。
報道フロア内でも、朝から話題になっていた。
「離婚率、ここ数年に限っては減っていますよ」
早速データを持ち出すディレクターに、
「これってまさか、分割制度待ち?」と、デスク。
そしておもむろに「…銀座だな」。
「村上、街の声を聞いて来い。夕方ニュースのスタジオに間に合うように、出来るだけたくさんのご夫婦にインタビューだ」
離婚率のデータと新聞記事を持って、慌てて銀座へ向かった。
 
「お買い物中すみません。テレビ朝日ですが…」
桜も満開の日曜日。
銀座四丁目の交差点は、春の装いで彩られていた。
足を止めて下さったご夫婦に、離婚を前提とした話を聞くのは申し訳ないと思いながらも、インタビューの主旨を説明する。
「年金分割?知ってるわよ!でも、半分なんて、少ないわよねぇ」と、奥様。
「受給額が…ですか?」
「そうよー。まぁ、7:3ぐらいが妥当ね」
恐る恐るご主人が聞く。「…どっちが3なの?」
「あなたに決まっているじゃない!」
散々我慢してきたのよ!と明るく笑う奥様の隣で、ご主人が弱々しく苦笑い。
「ま、結婚は我慢の連続よね」
「そういうものでしょうか…」私も思わず、聞き入ってしまう。
どのご夫婦にお伺いしても、年金分割の話のはずが、次第に夫婦像や結婚観へと変わっていく。
 
「この際だから、言ってしまおうかしら」(妻)
「まぁ、今までのツケがあるからなぁ…」(夫)
「最近の若い子は、何かあるとすぐ離婚するでしょう?」(妻)
「うちは、結婚60年目でねぇ…」(夫)

それぞれの夫婦。それぞれの日々。
手にした紙袋の中身も、歩幅も、話す事柄も。
 
「木村屋で、あんぱんを買って帰りましょう」(妻)
「今日みたいな日は、本当は花見がしたかったのですがねぇ…」(夫)

霞み渡った大通り。光を受けて、ゆっくり歩く後姿を見送った。
新年度、である。

(「日刊ゲンダイ 週末版」4月9日発刊)
   
 
 
    
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