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「朝顔」  (2011/09/08)




新政権の内閣支持率は、うなぎ上りだったが…。
うなぎではなく、どじょうでもなく、朝顔のお話。
野田総理が、落選中の思いを代表選挙で訴えた時のことだ。

「朝顔が可憐な花を咲かすには何が必要か。
あえて一番必要なのは、その前の夜の闇と夜の冷たさ。
闇を知って初めて、ほのかな光が嬉しいと思う。
冷たさを知って、温かみが幸せだと感じる。
夜の闇、夜の冷たさの中で、明かりと温かさを求めている人がいっぱいいる」

「朝顔」と聞いて、思い出すことがある。
小学生の頃、プラスチックの鉢を持ち帰り、夏休みに毎日「観察日記」をつけていた。


つぼみがふくらみました。
むらさきのはながさきました。


ぱりぱりと種を取って、カメラのフィルムケースに入れる。
越冬した翌年、庭にまいたら発芽した。
ベランダにつるが巻きついて、小さなジョウロで、せっせと水をやる。
以降、朝顔は毎年花を咲かせた。

その後、引っ越すことになり、
朝顔の種はフィルムケースにしまわれたままとなった。
父の入院、転校、塾通い。
その間、一度もふたが開けられることはなかったけれど。
政権発足をきっかけに、家族の記憶が巻き戻った。
「朝顔の種、まだある?」
その後、実家から送られてきた懐かしいケースを目にするや、
記憶がするすると芽吹く。

アサガオ。
側面に、見覚えのある筆跡で大きく描いてある。
油性マジックが、少し褪せている。


たねをしまいました。
25ねんがたちました。


今、この種をまいたら。
地に根ざした花は、咲くだろうか。




(「サンフロ・ジャーナル」9月8日配信)

   
 
 
    
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