前の記事を読む

次の記事を読む  

 
 
 
 「言葉」  (2011/09/22)




スタジオや、取材先から。
思いではなく、情報を届ける。
信条というには大袈裟だが、そう決めている。

ただ、時として思いは滲む。
ばしゃばしゃと切られるシャッターや、向けたマイクの角度からも。

9月10日(土)
鉢呂前経済産業大臣が、就任9日目で辞任した。
夜9時半から慌ただしく開かれた記者会見。
休日で空調は全て止まり、湿気と殺気で室内はざらついていた。

問題となった放射能発言の場は、記者団との非公式な懇談とされていたという。
どんな仕草をしたのか。どんな言葉を発したのか。
質問が集中する。

「具体的に、どうおっしゃったのですか?」

言った、言わない。
覚えている、覚えていない。

記者席から、ざっと手が挙がる。
フラッシュが語尾を裂く。こめかみから汗が流れる。

思いではなく、情報を届ける。
前提にはあるのは、歴然とした事実関係だ。

公式、非公式。
追求、追及。

記者会見の翌日には、「鉢呂経産相 不適切発言などで引責」と報じられた。
足元から蒸されるような40分間が蘇る。

適切か、不適切か。
発言も、報道も。



(「サンフロ・ジャーナル」9月22日配信)

   
 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む