スタジオや、取材先から。
思いではなく、情報を届ける。
信条というには大袈裟だが、そう決めている。
ただ、時として思いは滲む。
ばしゃばしゃと切られるシャッターや、向けたマイクの角度からも。
9月10日(土)
鉢呂前経済産業大臣が、就任9日目で辞任した。
夜9時半から慌ただしく開かれた記者会見。
休日で空調は全て止まり、湿気と殺気で室内はざらついていた。
問題となった放射能発言の場は、記者団との非公式な懇談とされていたという。
どんな仕草をしたのか。どんな言葉を発したのか。
質問が集中する。
「具体的に、どうおっしゃったのですか?」
言った、言わない。
覚えている、覚えていない。
記者席から、ざっと手が挙がる。
フラッシュが語尾を裂く。こめかみから汗が流れる。
思いではなく、情報を届ける。
前提にはあるのは、歴然とした事実関係だ。
公式、非公式。
追求、追及。
記者会見の翌日には、「鉢呂経産相 不適切発言などで引責」と報じられた。
足元から蒸されるような40分間が蘇る。
適切か、不適切か。
発言も、報道も。
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