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 「どじょう宰相」  (2011/09/01)




「『どじょうが金魚のまねをしてもしょうがねえじゃん』というのがある。
どじょうのように泥臭く、国民のために汗をかきたい」

野田佳彦総理大臣が誕生した。
民主党代表選挙での、自らをどじょうに例えた演説が記憶に新しい。

思えば2年半前。
アメリカのオバマ大統領就任の際、
その演説は世界中で話題になった。
“CHANGE”という簡潔なフレーズ。顔を上げたままの、真っ直ぐな視線。
当時、多くの人々の心を捉えたことは確かだ。

“DOJO”はどうだろう。
欧米では馴染みの薄い魚だそうで、海外メディアは翻訳に苦心している。
ニューヨーク・タイムズでは「泥の中で食べ物を探す、あまり美しくない魚」、
中東のアルジャジーラでは「(泥の中=)海底の魚」と紹介されたそうだ。

世界の中での日本の立ち位置は、今後の外交政策で示されていくとして。
初当選から約25年間、
ほぼ毎日、駅前に立ち続けたという野田氏が訴える言葉は印象的だ。

大事な局面でつまずく民主党を、「ホップ、ステップ、肉離れ」。
政権運営を、「坂道で雪だるまを押し上げていくようなもの」と形容し、
「今は、雪だるまが転がり落ちている状態だ」。

辞任した菅直人前総理大臣は、
スピーチライターを申し出た内閣審議官を断ったという。
あくまで自分の言葉にこだわったものの、どれだけの政策が実現しただろうか。
折しも先日、民主党はマニフェストの検証に関する中間報告を発表した。

国会周辺を取材していると、しばしば「数合わせ」という言葉を耳にする。
政治は数なのか。
先日の、野田氏の演説が蘇る。
政治は言葉なのか。

挙党一致、党内融和。
言うは易く、行うは難し。
もう、尾ひれをつける必要はない。
どじょうには、ちゃんと短いひれがついている。




(「サンフロ・ジャーナル」9月1日配信)

   
 
 
    
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