前の記事を読む 次の記事を読む  

 
 

 「一定のメド」  (2011/06/16)

「一定のメドがついた段階で―」

ペンを走らせる記者たちの手が止まる。
「…若い世代の皆さんに、色々な責任を引き継いで頂きたい」
各局のアナウンサーが、一斉に小声で実況する。
「菅総理大臣、事実上の引退表明でしょうか」

内閣不信任決議案を採決する、衆院本会議の開会直前。
民主党代議士会での首相の発言から、二週間が経つ。

一定のメドとは。
第二次補正予算の提出後?
福島第一原発事故が収束するまで?

辞任の時期が不明確なまま、早くも話題は後継選びに及んだ。
ポスト菅、世代交代、脱トロイカ。
見出しは走るが、政治家の名前は定まらない。

ここ数日、「サンデー・フロントライン」の取材で、永田町を行き来している。
国会議事堂で、中間派の議員にマイクを向ける。
議員宿舎の前で、有力候補とされる閣僚を終日待つ。
用意したフリップには、候補に名前が挙がった政治家たちの顔写真が並ぶ。

いつ、辞めるのか。
誰が、引き継ぐのか。

震災から三ヶ月が経った。
東北各所の瓦礫は、未だに撤去されていない。
避難所に敷かれた布団は、なかなか換えられない。

いつ、復旧するのか。
誰が、行うのか。

辞めさえすれば。
瓦礫は、急速に片付くのだろうか。
衛生環境が、万全になるのだろうか。

復興が進むのなら、誰だって―。
手に抱えたフリップが、やけに軽い。



(「サンフロ・ジャーナル」6月16日配信)

   
 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む