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 「これからの話」  (2011/06/02)

火、風、水、原子―。
そこに、太陽が加わろうとしている。
様々なエネルギーから作られた電気は、私たちの生活を照らす。
でも、これからの見通しは?

【4月29日】
『朝まで生テレビ!』のテーマは、原発だった。
原子力の専門家を中心とするパネリストの皆さんに、
「今後の代替エネルギーの具体案は?」と問うたところ、
すかさず政治家が切り返した。
「その前に、原発の事故を止めなければならない」

【5月27日】
『激論!クロスファイア』でお招きした、自民党の谷垣禎一総裁。
エネルギー論に話題が及ぶと、
過去に掲げた国策としての原子力政策に言及した。
聞きたいのは、この先のこと。
イタリアで行われる予定の国民投票を例に、伺った。
「原発の是非をめぐって、日本はどう向き合うべきですか?」
「まずは、十分な検証が必要です」

確かにそうだ。
例えば、政府と東電の統合会見で繰り返される責任論。
政府は…東電は…。主語は、福島でも被災地でもない。
責任の追及以前に、事態の収束。そのための検証も不可欠だ。

第一に、事故を止める。
同時に急がれるのは、エネルギー政策の再構築である。

「自然エネルギーの割合を、2020年代の出来るだけ早い時期に、
少なくとも20%に…」

G8サミットでの、菅総理大臣の発言。
その背景には、ソフトバンク・孫正義社長の構想が大きく影響したという。
全国各地の休耕田や耕作放棄地に、
大規模な太陽光発電所「メガソーラー」を建設し、
事業費はソフトバンクが負担する。
一方で、自治体が土地を工面し、
見返りとして発電売り上げの数%を永続的に受け取る。
この構想には、既に全都道府県の半数以上が賛同しているという。
では、農家の人たちは―。
「サンデーフロントライン」の番組内で、関東近郊を取材した。

【5月28日】
神奈川県秦野市。
広大な畑の奥に、竹藪が鬱蒼と茂っている。
地元の方に案内してもらうと、
後継者不足で40年以上放置された土地がそこここに散在していた。
「こういった土地に、太陽光パネルを設置しようという計画が浮上していますが…」
かつて農業を営んでいたおばあさんに伺った。
「ここは、シシも出るし、シカも出るしねえ…使い物にならないよ?」
それでも、新たなエネルギーを生み出せるなら―と、計画には賛成のようだ。
一方で、現役の男性は、断固反対だった。
「孫さん?背広組でしょ?農地は、あくまでも農業するための土地だよ」
言葉の端々に、農家としての矜持が滲む。

にわかに浮上した、太陽光発電構想。
原発に代わる、新しいエネルギーとなり得るのか。
ソーラーパネルの設置に、
どのぐらいの費用がかかるのか?誰が負担するのか?
電気を電力会社が買い取る「全量買取制度」も、まだ確立していない。

これからの話は、これからだ。



(「サンフロ・ジャーナル」6月2日配信)

   
 
 
    
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