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Vol.38 8月10日 『転々』

今回ご紹介するのは、お散歩ロードムービー。
三木聡監督×オダギリジョーさんの『時効警察』コンビが贈ります。

脱力?ゆるゆる?
東京散歩、最高です。

 

(C)2007「転々」フィルムパートナーズ

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『転々』

東京歩いて100万円?
井の頭公園をぷらぷらと出発、目的地はぼちぼちと霞ヶ関。
到着期限はナシ―。
見知らぬふたりの東京散歩の旅は、
借金取りのとんちんかんな提案から始まった…。


竹村文哉(オダギリジョー)は、大学8年生。
幼い頃に両親に捨てられた、ひとりぼっちの男。
いつの間にかこしらえた借金は、84万円也。
返済期限の前日、
文哉は借金取りの福原(三浦友和)から、借金をチャラにする方法を提案される。
それは、福原の「東京散歩」に付き合うこと。報酬は、現金100万円。
他に選択肢のない文哉は、福原の提案にしぶしぶ乗ることにした。

始まり:井の頭公園
→調布飛行場→阿佐ヶ谷のアパート跡→甲州街道沿いの安ホテル→
新宿中央公園→神田川に架かる面影橋→上野動物園→浅草の花やしき→…
終わり:霞ヶ関

  

結論を言ってしまえば、何も起こらない旅である。
しかし。
歩けば分かる、優しくなれる。
現実の歩みが、いつしか記憶の風景と重なっていく。

愛玉子オーギョーチイ(台湾のゼリー菓子)、食ったことある?」
「このアパート…取り壊されたんだ」

選ぶ路地一つで、全く違う景色が見えてくる。
気持ち一つでも、同じ。
元来、多面的であるはずの、何もかもが。

散歩。歩みを散らす。
散漫で、何かに捉われることもない。
てくてくというよりも、てれん、てれん。
所属していない自由と、所属できていない不安。
目に入ってくる予測できない光景を、時には見つめて、時には流して。


知らない街を歩くことは、知らない街を着ることでもある。
自身を脱ぎ捨て、景色を身に纏うほどに、
日暮里や新宿が、おもむろにぬうっと現れる。
行く先を、転々と。
 
転々と。
 
立ち戻る場所など、どこにもないけれど。
立ち寄る場所なら、どこかにありそうだ。

ほろりと崩れ落ちる、この繊細な味わいは―。
マカロン?
間違いなく、三木ワールドの新境地。
小ネタ&脱力系もさることながら、とぼとぼの先には、じんわり、が待っている。

いや、『転々』は…甘苦いカルメ焼きかな。

♪作品データ♪
『転々』
原作: 藤田宜永(新潮文庫刊)
監督・脚本: 三木 聡
出演: オダギリジョー三浦友和小泉今日子吉高由里子 他
配給: スタイルジャム/2007/日本
※ 11月、アミューズCQN、テアトル新宿ほかにて全国順次ロードショー

『転々』公式サイト
http://tokyosanpo.jp/

   
 
 
    
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