最近も、浜崎あゆみのPVやCMなど、あちこちで話題になることの多い行定監督が、
かねてよりあたため続けてきたという意欲作。今回は『ロックンロールミシン』をご紹介。
ガタガタガタガタガタ…。
ロックミシンのうなり声は、なるほど、ロックンロールにも聞こえる。
巨大な布ロールと裁断クズに溢れる、アパートの一室。
金髪にTシャツ姿の凌一(池内博之)、服飾学校の教師である椿(りょう)、ロンドン帰りのカツオ(水橋研二)の三人は、洋服のインディーズブランド「ストロボラッシュ」を立ち上げようとしていた。
一方、仕事も恋愛もうまくいかない会社員の賢司(加瀬亮)。ひょんなことから高校の同級生である凌一と出会い、誘われるがまま彼らの部屋を訪ねる。
まるで魔法のように、布が洋服に変わる。
好きなことを、自由に。
止まらないミシンの音のように、永遠に続きそうな、奔放な日々。
賢司はどんどん彼らに引き込まれていく。でも…。
自分の居場所はどこにあるのか?
自分のやりたいことは、何なのか?
会社を辞めて「ストロボラッシュ」の立ち上げに参加するも、結局それがやりたいことなのかが分からないまま、賢司は漫然と毎日を過ごす。好きなことに打ち込む彼らを横目で見ながら、憧れと、焦りに苛まれる。
好きなことを生業に出来るのか?
夢見るだけで生きていけるのか?
賢司だけでなく、「ストロボラッシュ」のメンバーも、やがてそういった現実に直面する。
ただ「好きだから」「やりたいから」という気持ちだけで、暮らせるのだろうか。確固たる意思や希望が原動力になっても、必ずしも実際の生活には結びつかない。
理想と現実の境界には、川が流れている。
川幅も、深さも、流れの速さも、人によって様々だ。
そして誰もが、その川を何とかして渡りきりたいと考えている。
彼らの狭間に流れていたのは、延々と続く「布の川」だった。
物語では、賢司は自分の居場所や好きなことを探せないままでいる。
現実の岸辺に佇む彼が、もし、その先に何かを見つけたら…。
まだ見ぬ対岸に向かって、泳ぎだすのだろうか?
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