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Vol. 3 10月2日 『チョコレート』

 
黒人として、アカデミー史上初の最優秀主演女優賞を受賞したハル・べリーと、個性派俳優ビリー・ボブ・ソーントンが競演。深い喪失の淵から、愛を知ることによって人生を取り戻そうとする、男女の物語。

死刑囚の夫と幼い息子を相次いで亡くしたレティシア(ハル・べリー)と、息子を目の前で失ってしまった、人種差別主義者のハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)。
それぞれの家族の死をきっかけに、
交わるはずのない二人が互いに惹かれあっていく…。

全篇を通じて「感情」がストーリーを牽引しており、登場人物も、セリフというよりは表情や眼差しで演技していた。そして、全てが淡々と過ぎ去っていく。
しかしその中で、抑えられた動きとは対極にあったのが、激しい愛情表現。
愛する人を次々に失った二人は、その心の隙間を埋めるようにお互いの肌のぬくもりを求める。

「息が出来ないくらいの苦しみを味わったことがあるか?」と、ハンク。
「私を大切にして」と、レティシア。

お互いに「愛して欲しい」とは口にしない。
それでも体と心をぶつけ合う二人からは、計り知れない孤独を感じた。
セックスシーンを見て、こんなにも悲しいと思ったことはない。

ラストシーンは月明かりの夜。バルコニーに座っている二人。
チョコレートアイスクリームを、ハンクがレティシアの口にそうっと運ぶ。
ぶつけるのではなく、受け入れ合う行為。
それは、過激なセックスよりも、丁寧で、温かくて、愛情に満ちていた。

 

黒く、ほろ苦いチョコレートを口にするレティシアの姿は、何故か純白のミルクを飲んでいる赤ん坊にも重なった。
それがないと死んでしまう。生きていくために必要なものを求める時の、あまりにも幼く、無垢な表情。彼女はチョコレートという愛情を食べたのだ。

体が先でも心が先でも、両方が結びついた時、愛は目に見えて存在する。誰かを必要とすることは、単なる欲求ではなく、人間が生きるための本能であると感じた。

■作品データ/『チョコレート』■
監督:マーク・フォースター
原作・脚本:ミロ・アディカ、ウィル・ロコス
出演:ハル・ペリー、ビリー・ボブ・ソーントン、ヒース・レジャー、
    ピーター・ボイル、ショーン・コムズ、モス・デフ、

配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ/
    2001年/アメリカ/113分


※日比谷シャンテシネにてほか全国ロードショー中

アカデミーの歴史を塗りかえたハル・ベリーの演技が絶賛されている
『チョコレート』
Smaムービーのおすぎさんも陶酔しながら“ぜひ観て欲しい”と5000円の高いチケット代をつけた珠玉のラブ・ストーリー。
「大人の恋愛というひと言では語りきれません」
という村上アナでした。
 

『チョコレート』公式サイト
http://www.gaga.ne.jp/chocolate/

   
 
 
    
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