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「世界一周」(2012/9/3

大学時代の友人が、写真展を開いた。
2009年、太陽と月が重なる皆既日食の当日に結婚し、
翌日から、夫婦で世界を旅している。

訪れた国は、40カ国以上。
スナフキンを地で行く…と言いたいところだが、彼に孤独は似合わない。
中学生の頃の夢は、漁師か釣り師。
酒と祭りをこよなく愛する彼の周りには、絶えず人が集まった。

会場に入ると、丸い地球が平面上に広がった。
メルカトル図法の視界で、各国を捉える。

冬のアラスカ。

 

 

ナミビアの砂漠。

 

 

パネル展示の他には、
日常を切り取ったアルバムも置かれていた。

色のこぼれる青空市場。

 

 

民族服の少年たち。

 

 

世界はひとつ。
かつて、船乗りが自らの腕と知識で確かめたように、
自分の足で地球をひとまわりした彼は、そんな感覚を抱いたという。
私はといえば、幼い頃にそう歌ったことはあるものの、
実感したひとときはない。

「お友達ですか?」

サファリベストを着た、60代前後の男性に声をかけられた。
一時帰国している夫婦は、現在、伊豆の旅館に住み込みで働いていて、
秋には、再び旅に出るそうだ。

「まったく、何やってるんだかねぇ…」

父親だろうか。
嬉しそうに、寂しそうに笑いながら、アルバムを整理している。

 

ボリビア、ウユニ塩湖                       
 

会場を出ると、煮詰めたような日差しが流れ込む。
駅前まで歩く間、携帯電話が鳴った。

「もしもし?今月の朝生だけど…」

『朝まで生テレビ!』の討論テーマが、領土外交に決まったとの連絡だった。

アジア一体となって―。
グローバルな視点で―。
かくあるべきと主張される一方で、
連日、民族紛争や領土問題が報じられる。

世界はひとつ?
スタジオでは、聞けない。

 

アメリカ、モニュメントバレー                  
 



(9月3日配信)   

   
 
    
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