大学時代の友人が、写真展を開いた。 2009年、太陽と月が重なる皆既日食の当日に結婚し、 翌日から、夫婦で世界を旅している。 訪れた国は、40カ国以上。 スナフキンを地で行く…と言いたいところだが、彼に孤独は似合わない。 中学生の頃の夢は、漁師か釣り師。 酒と祭りをこよなく愛する彼の周りには、絶えず人が集まった。 会場に入ると、丸い地球が平面上に広がった。 メルカトル図法の視界で、各国を捉える。 冬のアラスカ。
ナミビアの砂漠。
パネル展示の他には、 日常を切り取ったアルバムも置かれていた。 色のこぼれる青空市場。
民族服の少年たち。
世界はひとつ。 かつて、船乗りが自らの腕と知識で確かめたように、 自分の足で地球をひとまわりした彼は、そんな感覚を抱いたという。 私はといえば、幼い頃にそう歌ったことはあるものの、 実感したひとときはない。 「お友達ですか?」 サファリベストを着た、60代前後の男性に声をかけられた。 一時帰国している夫婦は、現在、伊豆の旅館に住み込みで働いていて、 秋には、再び旅に出るそうだ。 「まったく、何やってるんだかねぇ…」 父親だろうか。 嬉しそうに、寂しそうに笑いながら、アルバムを整理している。
会場を出ると、煮詰めたような日差しが流れ込む。 駅前まで歩く間、携帯電話が鳴った。 「もしもし?今月の朝生だけど…」 『朝まで生テレビ!』の討論テーマが、領土外交に決まったとの連絡だった。 アジア一体となって―。 グローバルな視点で―。 かくあるべきと主張される一方で、 連日、民族紛争や領土問題が報じられる。 世界はひとつ? スタジオでは、聞けない。
(9月3日配信)