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「原発再稼働反対デモ」(2012/8/27)

「花火大会みたい」
頭に造花を挿した、キャミソール姿の若い女性。
「不謹慎なこと言うな!」
後ろから、初老の男性が声を荒らげる。

7月初旬、金曜日の夜。
首相官邸前で行われた、原発再稼働反対デモでの光景だ。

「再稼働、反対!」

官邸に向けての声は、午後8時に向けて次第に止んでいく。
警察官が順路を誘導し、地下鉄の入口付近がにわかに膨れ上がる。
汗だくの警察官が、スピーカーから顔を逸らせてぼそっと言った。
「これ、いつ終わるんスかね」

同じ日に、ジャーナリストの田原総一朗さんも官邸前を取材していた。
「ゲバ棒ではなく、風船を持っていた!」
「乳母車を引いたお母さんがいた!」
田原さんに限らず、全共闘世代の皆さんは口を揃えて言う。
これは、今までのデモとは違う。
バリケードや投石とは無縁の世代にとって、その違いは知り得ない。
知りたいのは、今ここで起きているデモが、
何を象徴し、どこに向かうのかということだ。

参加者の数は、調査元によって誤差はあれど、概ね把握出来る。
だが、個々の価値観を捉えるのは難しい。
原発に対する主張だけでも、多岐に渡る。
今すぐゼロにすべきか、徐々にゼロに近づけるのか。
今すぐゼロにした場合、どのエネルギーで代替するのか?
徐々にゼロにする場合、何年かけて行うのか。


先日、『激論!クロスファイア』のゲストとして、
デモの主催者である、首都圏反原発運動の皆さんにお越し頂いた。
リーダーの女性は、直ちに原発をゼロにすべきだと言う。
では、その間、どのエネルギーで電気を享受するのか?
原発を止めることによる、生活への影響は?
脱原発までの具体的な日程や、廃炉の手順は?

番組の最後に、リーダーに伺った。

「何を以って、このデモの終わりなのですか?」
「夏の間に、大飯原発を止めることです」

「個人的には…」と前置きした上で、答えが返ってきた。

官邸前でつぶやいていた、若い警察官を思い出す。
「これ、いつ終わるんスかね?」
永田町の周辺では、挨拶代わりに政権の終焉が占われる。
「次の選挙、いつ?」
福島県では、原発事故による避難区域が指定されたままだ。
未だに故郷に帰れない県民の皆さんは、6万人以上にのぼる。

時間、空間。
何かに線を引くため、
日々に向かって、幾つもの手が、伸びている。
これから先、灯す明かりは何だろう。








(8月4日配信)   

   
 
    
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