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「ザ・スクープ取材記―沖縄と米軍―」(2012/5/16)

2012年5月15日。
沖縄は、返還40年を迎える。
今月から担当する『ザ・スクープスペシャル』と、
前回の『朝まで生テレビ!』では、共に沖縄を取材し、議論した。



1970年代初頭、キャンプ・シュワブ

『ザ・スクープスペシャル』では、
沖縄に存在したとされる枯葉剤について検証する。
ベトナム戦争中、ベトナムの広域に散布された枯葉剤が、
沖縄にも持ち込まれ、県内で使用されていたとしたら―。
この疑惑を究明するため、
アメリカに渡り、沖縄に駐留していた退役米兵たちを取材した。

ミネアポリス、カンザスシティ、ワシントンDC。
退役軍人省のあるワシントンDCを除いては、
殆どが、ガイドブックには載っていない小さな町だった。
ホテルのない地域ではカジノに宿泊し、
偶然にも、地元のバーで開かれていた退役軍人パーティでは、
顔の大きさほどあるスペアリブを振る舞ってもらった。



ミネソタ州、イエロー・メディスン郡

ベトナム戦争開戦から、50年以上。
古い記憶を辿り、当時の状況を少しずつ語ってもらう。
60歳を越えた彼らの多くは、今でもガンや白血病に苦しんでいる。
自宅には、飲み続けねばならない大量の薬。
だが、病状と枯葉剤の因果関係を訴え続けても、
国からの補償は下りない。
日米両政府は、枯葉剤が沖縄に持ち込まれたこと自体を否定している。

ある町では、地元紙の記者からの取材を受けた。
20代だろうか。
首から下げた一眼レフを「ニコン製だ」と笑う彼と、
撮影の合間に少し話をした。

「え?日本には、まだ米軍がいるの?」

在日米軍の存在を知らない若者は、目を丸くした。
戦争は終わったのに、なぜ?
どうして、米軍は日本に駐留しているの?
その問いを繰り返しながら、東京に戻った。


約1カ月後。


『朝まで生テレビ!』では、日米安全保障について、沖縄で討論した。
スタジオには、約30名の県民の皆さんにお越し頂き、
政治家、有識者、元米国沖縄総領事、ジャーナリストらも参加した。

「どうして、沖縄だけに基地が集中しているのですか」
「沖縄問題を、本当に国民全員で考えてもらっていますか」

「アジアの安全を守る上で、地政学上、沖縄は重要な位置にあります」
「普天間の危険性は除去したいですが、抑止力は必要です」

国を、どうやって守るのか。
何を以って、抑止力なのか。
主張や価値観がぶつかり合う中、静かに夜が明けていく。



宜野湾市普天間

番組終了後、そのまま車に乗って、米軍基地と周辺地域を訪れた。
普天間飛行場、嘉手納飛行場、名護市辺野古。
ラジオのニュースが、梅雨入り初日を伝えている。
辺野古の海岸に近付くにつれ、いよいよ雨脚は強まっていく。



嘉手納飛行場

朝日新聞と沖縄タイムスの共同調査によると、
沖縄の米軍基地が減らないのは、「本土による差別だ」と答えた人が、
沖縄では50%にのぼっている。
本土の人たちが沖縄のことを理解しているかとの問いには、
「そうは思わない」が沖縄で半数以上だった。
時に怒号が飛び、時に静まり返った、数時間前のスタジオが蘇る。

今までの歴史と、これからの安全保障を、同時に語ること。
胸を抉られるような史実と向き合った上で、
それでも、この先を考えねばならない。
政府の責務であると同時に、我々の問題である。

どうして、米軍は日本に駐留しているの?
アメリカで問われたことを、沖縄で、答えられたのか。

辺野古漁港とキャンプ・シュワブの境界には、
基地建設に反対するメッセージが掲げられていた。
波打ち際のフェンスに結び付けられたリボンの色彩が、
大きな魚となって、風と雨に泳いでいる。







(5月12日配信)   



5月20日(日)午後2時〜3時25分 生放送
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/

   
 
    
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