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「若気の至り」(2012/5/11)

前回のコラムでは、教育改革について綴った。
桜の季節も手伝って、
ここ最近、花見がてらにかつての学び舎を訪れている。

中学から大学までは、女子校に通った。
神奈川県川崎市。
山全体が中・高・大学の敷地であり、
駅前から校舎まで、緩やかな坂道が続く。
「うちらの足が太いのは、絶対にこのせい」
何とも素直なネーミングである「大根坂」を、上ったり下ったり。
「ルーズソックス」に反応する世代はわずかだと思うが、
高校生の当時は、ひざ上20cmのプリーツスカートに、
ルーズソックスがお洒落の定番。
歩くうち、だぼだぼなソックスの弛みに、草花が絡むのが難点だった。

今や、中高生の足元はすっきりとしたハイソックス。
「あの流行は何だったのだろう」と思い返しながら、
相変わらず短いスカートをひらひらさせ、
逞しく歩く彼女たちがみるみる遠ざかる。
今でも、先生に「丈が短い」と指導されているのだろうか。

あの頃、散々注意を受けた私たちは、
スカートの下に指定のジャージーを履いて、「これでどうですか」。
今度は、「美観を損ねる」と怒られた。
「最初から、スカート丈を長くすれば良いじゃないの」
反論出来ない代わりに、ジャージーの裾をずいっとたくし上げていた。

先生、ごめんなさい。
教育改革なんてテーマで綴っていたものの、
当時を思い出したら、そもそもの自己改革が必要でした。





高校2年生当時。
おそろいのマフラーと、ルーズソックスが懐かしい!

小学校は、地元の公立に通った。
東京都大田区。
急な坂を下りきった場所に、校舎がこぢんまりと建っている。
あじさい屋敷、鳩小屋、都営住宅―。
かつての住まいを拠点に、通学路を順にたどる。
同級生の自宅の前には、子ども用の自転車が止められていた。
当時、クラスで飼っていためだかの尾びれを定規で切った彼と、
大喧嘩をしたことを思い出す。

5年1組。担任の先生は、教育実習を終えたばかりの女性だった。
「理科の実験だ」と主張する彼に対して、
「(怖い先生がいる)2組だったら、そんなことしなかったでしょ」
確か、そのようなことを言って、彼よりも先生を傷つけてしまった。

坂を下ると、ようやく校舎が見えてくる。
「校庭開放」の札がぶら下がった校門を潜ると、声をかけられた。
「何組の生徒さんですか?」
振り返ると、野球チームのパーカを羽織った母親が、
メガホンを差し出した。
「あ、いえ…」
慌ててお辞儀して、校庭の隅にある鉄棒を横切った。

先生、お元気ですか。
生徒ではなく、保護者の年齢になりました。
相変わらず、逆上がりは出来ないままですが。






(4月28日配信)   

   
 
    
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