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8月25日 プレイバック・報道ステーション企画
『激闘シンクロナイズドスイミング 北京五輪を終えて』

原田早穂: 「コンチキショウという気持ちが、すごく強くて」

鈴木絵美子: 「やっぱり金子先生を勝たせたいという気持ちがすごく強くて」

金子正子: 「スカッとしました」

この日本と中国の3位争いをよそに、果敢に王者ロシアに挑戦したのが、藤木麻祐子コーチのいるスペインでした。

31歳のメングアルと25歳のフェンテス。
おととしの春、ベテランのメングアルが新たにフェンテスとペアを組んだときから、二人の技術指導は藤木コーチが担当してきました。

この二人でオリンピックのデュエットに出場するのは初めてです。

鞭のようなしなやかさで、独創的な動きを情熱的に演じるメングアルとフェンテス。
この複雑な動きをここまで同調させたのは、藤木コーチの努力の賜物でした。


芸術点で10点を出したジャッジもいます。
後一歩ロシアには及びませんでしたが、これまで一度もメダルをとったことのないスペインが、初めて銀メダルを決めた瞬間でした。

スペインにとっての初めての表彰台が日本を抜いての銀メダル。


藤木麻祐子:「いろいろあって、私はスペインで教えることになって、今そのスペインの国旗を見ながら、ここが自分の順位なんやっていうのが、なんか不思議やなとおもって。日の丸がこっちにあって、スペインの旗がこっちにあって・・・ああ、銀メダルなんやって。」

5年前はメダルに程遠かったスペインが日本の技術力を注入されたことでここまで成長してきたのです。


シンクロナイズドスイミング後半戦、チーム演技ではさらに激しい戦いが展開されました。
デュエットでメダルを逃した中国はこのチーム演技に全てをかけてきました。

テクニカルルーティーン、井村オリジナルの移動カデンスアクションに始まり、華やかで楽しい世界が展開されていきます。

何よりも、長い脚をこれでもかと同調させた動きは圧巻でした。

中国48.584
日本48.167

0.4177日本を上回り、中国は3位発進です。

選手たちが声をそろえて、「中国がんばれ!」と叫びます。

  

宮嶋泰子: 「よくここまで1年半で育てましたね。」

井村雅代:「やあ、でもそんなデュエットこけているから、そんなん思いません。1年半ではだめなんだ。やっぱり4年でしなければならないんだって思いましたよね。だけれどこうなったら行くしかないですから。」

テクニカルルーティーン終了後、なんと中国チームは着替えもせずに、翌日のフリールーティーン決勝のための練習に入っていました。

練習につぐ練習。

わずか1年半でチームを作り上げなければならない孤独な戦い。
相談する相手もいない中国の地で、井村コーチを支えていたのは、去年10月になくなった母の言葉でした。

  

井村雅代: 「最後に母と交わした、ぴたっとあった言葉が、『次もいいもんつくらなな』って言ったんです。『またいいもんつくらなな』って、『お母さんは応援しているよ』って。」

中国の素敵さを表現するために、井村コーチはさまざまなサポートを得てきました。
リフトは飛び込み世界一のコーチの協力を得て、ひねりを入れた高度なものにしました。
脚で作るかわいらしい表現は中国雑技団からアイディアをもらいました。
長い脚の特徴を生かした演技が次々に繰り出されていきます。

  

シンクロ指導暦35年の井村ワールドが炸裂した作品でした。
4年前のアテネオリンピックでは6位だった中国ですが、この演技に対するジャッジの評価は9.8から9.7。

井村コーチのいいものを作りたい。見て楽しいものを作りたいという職人気質が中国の選手たちをメダリストに押し上げたのです。

スペインも2つ目の銀メダルを獲得し、これまでオリンピックでメダルを獲ったことのない二つの国が、表彰台に上がりました。

井村雅代: 「コーチとして最高に幸せ!すごい幸せ。国なんて関係ない。」

  

  

4年前のアテネオリンピックで2位だった日本は今回5位に終わりました。
日本の演技を振り返ると、メダルを落としてはいけないという重圧からか、一人ひとりの演技に切れがなく、日本の特徴であった脚の絞めや同調性も今ひとつでした。

さらには、プールの底に足を付いてしまったことでペナルティーを取られ、最後気を失う選手が出るアクシデントまでありました。

  

日本のシンクロの伝統はここで途切れてしまうのでしょうか。

藤木麻祐子: 「日本の強さはこのままでは終わらないと思う。」

井村雅代: 「技術力はたいしたもの。日本の技術力と対抗するのは、それと競って上をいっているのはロシアだけ。それと選手もコーチも粘れる。根気強い」

異国の地で日本の技術を伝えてきた井村コーチと藤木コーチだからこそ見えてくる日本シンクロの魅力。
二人とも日本が持つ力を強く信じています。

藤木麻祐子: 「こういう結果になったから、思い切って何かを変えられるかもしれないし」

井村雅代:「若いコーチ、若い力に託す。ともかくそのコーチのカラーを出させてあげる。そういうことをすれば大丈夫。若いときは誰も不安ですよ。そんなときから私も始まったんだから。」


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