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3月5日 スペインシンクロ大躍進の陰に
日本人コーチ藤木麻祐子の存在があった。


 
 
チーム フリー演技 「ダリ」


こんな彼女たちだからこそ発想も自由で大胆です。
チーム演技ではスペインの誇る画家サルバトール・ダリをテーマにしています。

ダリの絵のイメージがふんだんに取り入れられている演技構成です。

アナ コーチ:「私たちはできる限り自分たちの力で頭脳的な工夫をして芸術面を高め、
これまでと違うシンクロを追い求めているの。」



スペインチーム アナ・タレスコーチ


その柔軟な発想は、藤木さんにとっても刺激的なものです。

もちろん勝つための作戦も立てます。
去年世界選手権で日本を破ったデュエットでは、今年実験的な試みをはじめました。
テクニカルルーティーンにだけメングアルの相手に、
新しくアンドレア・フェンテスを起用することにしたのです。



G.メンガル & A:フェンテス


「アンドレアは体がすごく締まるのでテクニカルにはすごくいいと思います。」

この作戦がずばり的中。
7月下旬にブタペストで行われたヨーロッパ選手権ではこれまでにない得点を得ることに成功したのです。



ヨーロッパ選手権(ブタペスト)


メンガル:「アンドレアと泳ぐのはいい感じね。」
フェンテス:「練習と同じような感じだったわ。」
アナ コーチ:「テクニカルルーティーンで9.8を獲得したのははじめてよ」
宮嶋:「藤木さん、9.8っていうのはすごいですね。」
藤木:「それもロシアのジャッジからだったんで私たちびっくりしているんですけれど。」
アナ コーチ:「彼女はいい仕事をしてくれたわ、
特にスピンに関しては高いレベルにしてくれたわ、ねえマユ。」

試合になると俄然集中力を発揮するスペイン。
移動中のバスの中でも、誰に言われるわけでもなく、
一人一人が自発的にウォームアップをはじめます。



髪をまとめメイクアップをしながら、徐々に気持ちを高めていきます。
タトゥを消して、ピアスをはずし、いよいよ試合です。


 


今年のスペインの自信作はフリーコンビネーションです。
テーマはキャッツ。



フリーコンビネーション
CATS


変幻自在な動きで観客を魅了する水上ミュージカルを見せてくれます。
これまでの自由でダイナミックな構成に加え、一人一人の技術力も上がり、
より力強いシンクロになってきているようです。

芸術点では9.9も出て、
ヨーロッパ選手権では、ロシアについで2位の座につきました。



ヨーロッパ選手権
フリーコンビネーション 2位


シンクロ界に新しい風を巻き起こしているスペイン、
その中で藤木さんはなくてはならない存在になってきているようです。




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【編集後記】
スペインチームの藤木さんに初めてお会いしたのは2003年のトルコのイスタンブールだったように記憶しています。
シンクロの欧州カップを取材している日本人クルーはもちろん私たちテレビ朝日だけ。
藤木さんのほうから「こんにちは」と声をかけてきてくれました。
それは藤木さんがスペインチームに入ってまもなくのころだったと思います。
とても素敵な選択をした方だなと思いながらも、当時スペイン語もよくわからないまま飛び込んだ彼女の勇気に脱帽したものです。
チームがどう変わっていくのか、そのころから私はかなり意識をしてスペインを見ていたような気がします。
藤木さんが他国のチームを教えることに対して、
日本の技術が流失してしまうと眉をひそめる人もいますが、
実際にはそんなに簡単に日本の技術がすぐ彼らに受け入れられるわけではないようです。
スペインにはスペイン人の持つ身体的なよさがあります。
きちきちとした日本流の技術を教えてしまうと、
スペイン人ののびのびとした、柔らかな動きが殺されてしまうのです。
難しいものです。
日本のフィギュアスケーターたちが指導してもらっているのは今や外国コーチばかり。
サッカーにしてもしかり。
日本のコーチが外国チームを教えるなんて、素敵じゃありませんか。
スポーツは外国と戦うためのツールではないのですから。
 
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