前の記事を読む
次の記事を読む
トップ
>
パーソナルトップ
>
プロフィールトップ
> エッセイバックナンバー
2月23日
大舞台に強くなる 〜岡崎朋美大研究 06トリノ五輪〜
(報道ステーション・プレイバック)
トリノ五輪の岡崎朋美
驚くべき行動 レース2時間前
2月14日
女子500mの日。
レースを2時間後に控え、岡崎さんは完全に戦闘モードに入っていました。
岡崎さんがウォームアップを終えて中に入ろうとした時、
ドアが閉められていて、外からは入れないようになっていました。
宮嶋:
「このとき、私は、ドアを開けに行ったのですが、
そのあとの岡崎さんの行動に、本当に驚かされました。」
岡崎:
「がんばります」
「とりあえず、練習のとおりにできれば、一番いいと思うんで、がんばりたいと思います。…」
宮嶋:
「自分のレースを2時間後に控えて、カメラの前で話す選手を、
私は13回のオリンピック取材で、初めて見ました。」
このことを本人に確認してみると、意外な答えが返ってきました。
岡崎:
「しゃべっていました?覚えていない!(笑い)」
無意識のうちに、カメラを利用して自分自身に「練習どおり」と言い聞かせていたのですから天晴れと言うほうかありません。
本番のレースで実力を発揮するためには、
どんな心理状態でいるのがよいのでしょうか。
辻氏:
「本番で実力を発揮できる心の状態をフロー状態といっているんです。」
フロー状態とは、液体が流れるように、気持ちがゆったりとしていて、
自分自身のイメージを大きく持ち、心のエネルギーが高く、右脳が働いている状態です。
岡崎:
「五輪って4年に一度ですからね、この時を逃しちゃいけないって言う気持ちが強いので、もうこの舞台は私の舞台だというふうに、思いながらは滑っていますね。」
宮嶋:
「主演女優?」
岡崎:
「そうですね。女優になって。
はいそういう自分を楽しむというんですか、自分自身を楽しんでいくんです。」
主演女優、その気持ちが、
大舞台で最高のパフォーマンスをするためのフロー状態をつくりあげたのです。
500m、一本目のレース。
気持ちが高ぶっていながら、冷静に周りが見える、これまでにないいい集中。
一本目のレースをほぼ完璧にこなします。
38秒46で、一本目終了時点で3位につけ、メダルへの期待が高まります。
2本目のレースは2時間後です。
一本目 38秒46 3位
しかし、このあと、完璧に見えたフロー状態がある出来事で壊れたのです。
岡崎:
「あれ、見なきゃよかったんですけれど、たまたま私の控え室のところに紙が置いてあって、それタイム表だったんですよね。あの順位表と。
それ何だろうと思って…タイムだったんで、見ちゃって…
これ誰が置いたのかなとか思ったんですけれど、
上を狙いに行くんですけれど、やはり下も見ちゃってたんですよ。
計算っていうか、タイム差を計算しちゃったんですね。」
辻氏:
「今まで自然にできていることが、一瞬その紙のおかげで揺らいだ可能性がありますよね。
今まで働いていた右脳が一気に働かなくなって、左脳の分析君が生まれてくるわけですよ。」
左脳が働き出したときに、パフォーマンスは小さくなってしまうといいます。
岡崎:
「やはり二本目、それを意識しすぎちゃって、かたくなってましたよね。」
第二カーブの出口でバランスを崩し、結果は4位。
惜しくも100分の5秒の差で、メダルには届きませんでした。
女子500m 4位
それにしてこれまでの経験と自らの感性を働かせて、
オリンピックという場を自分の物にしてしまう岡崎さんの能力には驚かされました。
いつも笑顔で自然体。
岡崎さんの右脳はどのように育てられたのでしょうか。
北海道斜里郡清里町
-
北海道清里町の、酪農を営む家で朋美さんは育ちました。
岡崎:
「犬とおなじだね、においかぎ始めている。」
小さい頃から動物が大好きだった朋美さん。
子牛は朋美さんの差し出す指を母牛の乳首だと思ってきゅっきゅと音をたてて吸っています。
岡崎:
「かわいい、ちっちゃいし、すってるし…
子どものころから普通に、自分も牛も同じって感じで育ってるんで…通じ合えばばっちり!」
動物には人間の計算など通じません。
こんな環境の中で朋美さんの右脳は大いに発達してきたのでしょう。
朋美さんは、3人兄弟の末っ子です。
母親のイセノさんは子どものころの写真をめくりながらつぶやきました。
母 イセノさん:
「人見知りしないんで、どこへつれて歩いても何の心配もなく」
酪農の仕事で忙しいご両親。
その背中をみて朋美さんは育ちました。
父 元さん:
「子供のやりたいことをね、なるだけやらしてやりたいっていうのがあってね。」
お父さん自身も去年、70歳でハーレーのバイクを購入し、ツーリングを楽しむなど、こちらも年齢や世間体に縛られることとは無縁です。
この親にしてこの子あり。
「朋美お帰り」
「乾杯!」
清里に住む親戚一同が朋美さんのために集まってくれました。
話題はいつしか4年後のオリンピックのことになりました。
母 イセノさん:
「やってもらってもうれしいんだけれど、
やっぱり孫の顔も見たいね。」
親戚のおばさん:
「それが本音だね」
父 元さん:
「本人しだいだね。」
岡崎:
「じゃあ、私がやめるって言ったら、よしよし、そうかって?」
母 イセノさん:
「じゃあ…孫見ながらバンクーバー(大笑い)」
これからが楽しみな34歳です。
*******************************************************************
【編集後記】
いろんなタイプの選手がいます。
岡崎さんのおおらかさは、一緒にいる者の鎧をすべて脱がせてしまうほどです。
きっとオリンピックの魔女もその杖を奪われてしまうのでしょう。
見事な右脳の力。
それにしても私の右脳は機能しているのでしょうか。不安です。
<<前のページへ
前の記事を読む
次の記事を読む
トップ
>
パーソナルトップ
>
プロフィールトップ
> エッセイバックナンバー