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1月25日 トリノ五輪のミドコロ
スピードスケート 今井裕介に注目!

トリノ五輪は2月10日開幕です。
そこで、トリノ五輪を楽しく見るために、選手たちの情報をお伝えしましょう。
まずはスピードスケートの今井裕介選手です。
これは7月下旬にANNスーパーJチャンネルで放送したものをまとめたものです。

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この2年間、清水宏保選手と共に練習を積んできた今裕介選手。
長野、ソルトレイクに続いて3度目のオリンピックを目指す27歳です。
今井選手の練習環境はこの3年半でがらりと変わりました。



今井裕介選手 27歳


2002年ソルトレイクシティーオリンピック。
トップアスリートにとって、自分の全てをぶつける五輪。
しかし、今井選手にとっては苦渋の五輪となってしまったのです。
実はこのレースの一ヶ月前に、所属する企業から、スケート部廃部の知らせを受けていたのです。
 


ソルトレークシティー五輪は・・・


精神的にも安定しないまま本番のレースを迎え、成績もまったく振るいませんでした。
1000mで15位、さらには1500mで 34位という結果でした。
 


ソルトレークシティー五輪では惨敗


五輪終了直後から今井選手の生活はがらりと変わります。
会社四季報を片手に、スポンサーを探すために会社周りをはじめたのです。

「このままスケートの練習もできなくなるんじゃないかと不安でしたね。」

そして今。
宮嶋:「今井選手自身のHPを覗いてみるとそこには彼の活動をささえているスポンサーの名前がのっています。」
 


今井選手のHP


所属先を失った今井選手は、少しずつサポートしてくれる会社を複数見つけてて来たのです。
企業に所属する選手ではなく、スポンサーに支えられながらフリーの立場で活動をするために、チームディスポルテという練習環境をつくり、コーチも練習仲間も全て自分で探してきました。夏場の練習の拠点は東京西が丘にある国立科学スポーツセンター(JISS)です。冬場は長野のエムウェーブです。
 


トレーニングの内容も、自ら工夫するようになりました。
ウェイトもただ重いものを持ち上げるだけではなく、滑りに直結するトレーニングに変えてきました。

今井:「いろんな意味で自分の周りがかたまってきたと思いますね。」

この夏は仲間とともに、一ヶ月間アメリカで家を借りての合宿に入りました。
一人一泊 2500円の節約合宿です。





一ヶ月間の米国合宿


企業に所属している時は当たり前のようにしてもらっていたことを、
フリーとなった今、自分自身でやるようにかわってきたのです。

「僕が今清水宏保さんと練習できているのも、そういうフリーになったおかげだと思っていますし、好きな自分の流れでやっていけますからそういう面でもメリットは大きいと。」
 


今年は、清水選手と共に独自の判断で、ショートトラックの練習を取り入れました。
ショートトラックのコーナリングの技術を身に付けて、カーブでのトップスピードをより速くしようというのです。

アメリカやカナダのトップスケーターにはこの数年、ショートトラックの練習をしている選手が増えています。今井選手も高校生のころまでショートトラックで世界大会に出場したこともあったほど、ショートにはなじみ深いものがあったため、今回このようなトレーニングを取り入れたのです。

ショートトラックでコーナリングで、体が倒れるバンク角をより鋭角にしても脚がキープできる練習をしていくのです。今のショートトラックの最新の技術を導入しようというものです。
 


オリンピックでは土壇場の判断力や強さが求められます。
指示待ちの練習ではなく、自分で判断して行動できることが、追い詰められた時にきっと役に立つ。そう信じて、フリーランサー今井裕介はトリノへ夢を馳せます。

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【取材後記】

今井選手は長野、ソルトレーク、そしてトリノと3回目の五輪を迎えます。

長野五輪ではショートトラックとスピードスケートの二つの競技で出場したいと密かに狙っていたそうですが、スピードスケートだけの出場でした。ある意味、若い頃からとても才能のある選手だったんですね。

2回目の五輪はソルトレークシティ。このときは精神的にがたがたでひどい状態でした。

今回のトリノ五輪に向けて4年計画でトレーニングを行ってきたのですが、今井選手自身で選んだコーチは青柳徹さん。88年のカルガリー五輪で日本人初の1500m5位に入った選手で、その後オランダにコーチ留学に行くなど、独自のトレーニング理論を持っている人です。
その青柳さんが今年の1月にポツリとつぶやきました。
「もう裕介に教えることは何もないな。」

青柳さんは4年計画の一年目は自分の持てるもの全てを教え、二年目から徐々に自分で考えさせるように仕向け、4年目はトレーニングのアドバイスをする程度に変えてきたそうです。自分でしっかりものを考え判断する選手が理想的というのです。そういえば以前、柔道の山下泰裕さんを育てた佐藤宣コーチも同じことをおっしゃっていましたね。本物のコーチの喜びは自分から自立していく選手を見ることにあるようです。

今シーズン、トリノで12月に行われたワールドカップの1000mで今井選手は2位に入りました。体力、身体能力に優れた外国勢がひしめく1000mや1500mで上位に入ることは日本選手にとっては本当にしんどいことなのです。

ということで、88年のカルガリーで青柳さんが作った1500m5位入賞を更新できるか、今井選手に注目したいと思います。
あっ、今井選手自身は1000mの方に期待してくれと言っているようですが・・・
   
 
    
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