ニュースステーションで5月15日放送予定
シンクロナイズドスイミングの世界一をかけての争いは、今、過去例を見ない激しさで行われています。今年7月にバルセロナでは世界水泳が行われ、その結果は来年のアテネオリンピックへも影響を及ぼすでしょう。何とか今年再び世界一の座についておきたい日本のデュエット立花美哉と武田美保の二人。今年の世界水泳にはどんな演技で臨むのか、現在のところそれは秘密のベールに包まれていますが、その内側に潜入してみました。
なんとそこには、フランス人の男性振付師の姿が・・・・
5月15日放送のニュースステーション特集の概略をお伝えしましょう。
2001年夏、パントマイムの演技で福岡の会場を大いに沸かせ、初の世界チャンピオンの座についた立花美哉・武田美保の二人。
日本独自のカチカチとした動きと正確な技術力に、その後もさらに磨きがかけられ、井村雅代コーチは2002年9月のワールドカップ・チューリッヒ大会に自信を持って臨みました。
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福岡の世界チャンピオン立花・武田のデュエット |
この大会の結果が、これほどまでに、日本とロシアに大きな影響を与えるとは、そのときは誰も考えませんでした。
日本は激しいライオン、コミカルな猿、優雅な鳥をアレンジしたワイルドアニマルの演技。
一方のロシア19歳デュエットは、誰もが知っている白鳥の湖の曲に乗って、これでもかというほど激しい動きを連続して見せたのです。
結果は、実力NO.1といわれた日本が、ロシアの19歳デュエットのパワーに押し切られる形で、まさかの敗北。
この大会で引退をも考えていた立花・武田の二人でしたが、予定は大幅に変更されました。
「負けて引退はしたくなかった」と武田が言えば、
「ここで負けたことで違う意欲が湧いてきた。」と立花がいい、現役続行を決意したのです。
一方、チューリッヒ大会の課客席に姿を見せ、選手たちの演技をチェックしていたシドニーオリンピックの金メダリスト、ブルスニキナ&キセロワの二人が突然、現役復帰を表明したのです。
「この2年間にシンクロ界に大きな変化が起こっていなかったことを確認し、まだやれると復帰を決意しました。」とはブルスニキナのコメント。
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復帰してきたロシア金メダリストをじっと見る井村コーチ |
チューリッヒW杯では、芸術点で差をつけられ、思わぬ敗北を喫した井村コーチにもまた大きな転機が訪れていました。
「私のやった課題が悪かった。私のやったテーマが悪かったと。本当に私は自分を責めました。」
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「私が悪かったと、自分で自分を責めました。」と告白する井村コーチ |
そしてもう一人、チューリッヒの結果を冷静に分析している人がパリにいたのです。
ステファン・メルモン氏。日本の新しい作品の振り付けを手伝うために、あらゆる情報を収集していました。
シンクロナイズドスイミングの歴史の中で、最も激しい戦いが日本とロシアの間で繰り広げられている現在、その水面下の闘いに迫ってみましょう。
もう一度世界一の座を取り戻したいと、現役続行を決意した武田美保選手と立花美哉選手。
2002年11月、二人は東京西が丘で行われたナショナル合宿初練習に姿を見せていました。この2年間、デュエットだけの練習を行ってきた二人でしたが、この日はチーム全員が集まっての練習です。今年現役を続けること、それは、来年のアテネオリンピックまで、2年間、現役を続けることを意味し、さらにはチーム演技にも参加することを意味していました。
一方のロシアも、アテネオリンピックで金メダルを取るためには、19歳の若手に任せておくわけには行かないと、シドニーオリンピックで引退をしたあの金メダリストが復帰してきたのです。
イタリアでシンクロのコーチをしていたブルスニキナ。
モスクワでテレビのキャスターとして活躍していたキセレワ。
二人ともに結婚をして家庭を持ちながら、再び選手としてチャレンジすることを選んだのです。
オリンピック金メダリストロシアと世界チャンピオン日本。
この両雄の対決が、早くも、4月に横浜で行われたジャパンオープンで実現することになりました。
練習から互いを意識しあうロシアと日本
ロシアは自分たちの演技をビデオで繰り返し見ています。
「しばらくぶりなので、お互いの呼吸が合わないんですよ。」
「勘が取り戻せなくて・・」
二人はご機嫌がよくありません。
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「なかなか勘が戻らなくて」と話すロシア金メダルデュエット |
じっと日本の演技を見ながらブルスニキナがつぶやきます。
「ねえ、この部分の振り付け前と変わっている?」
「ええっと・・・・いえ、前と同じよ。」キセレワが答えます。
二人は日本の演技を知り尽くしているのです。
4月6日
ロシアの金メダリスト二人が、シドニーオリンピック以来、3年ぶりのデュエット演技を披露します。シャーマンをイメージしたおどろおどろしい世界を演じます。
ところどころに二人の動きがあっていないところもあり、ブランクを感じさせますが、そこは振り付けでカバー。さすがポリャンスカヤコーチ、長い脚をうまく使った振り付けです。
ネームバリューも物を言ったのか、芸術点では二人の審判が10点を出しました。
一方の日本はあえて去年のテーマ「ワイルドアニマル」で勝負に出ます。
テクニカル面では申し分のない強さを見せつけます。
技術点では日本がロシアを上回りますが、芸術点で及ばず、僅かに、0.167ポイントの差で、この勝負はロシアに軍配が上がりました。
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「ワイルドアニマル」で臨んだ日本 |
真ん中の高い段に立つロシアの二人を見ながら、白髪をなびかせ大きな体をゆすりながら、ポクロフスカヤコーチが高笑いをしていました。
「ロシア総監督としては最高に幸せよ。だって、強いデュエットがロシアに二つあるんですもの。これから、若さか、経験か、評判を聞きながらどちらか一つを選びますよ。」(笑い・・・ )
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大笑いをするロシアのポクロフスカヤ総監督 |
それにしても日本はなぜ、今年のプログラムで闘わなかったのでしょうか。
記者たちの質問もそこに集中します。
「見せないのが今年の世界選手権のためには一番いいと思ったから。」
井村コーチは自らの計画をそう断言しました。
これまでテーマをロシアに真似され、研究されつくしてきた日本が取ったのは、情報封印作戦でした。
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