前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
1月18日 スポーツ少年団

 
そして、もっと過激に転身を図っている少年団を見つけました。
福島県の双葉町に行ってまいりました。ここにはスポーツ少年団から発展して、総合型地域スポーツクラブに大変身を遂げたところがあるんです。

「総合型地域スポーツクラブ」は生涯スポーツを楽しめる社会を作ろうと、文部科学省が提唱するスポーツクラブです。平成12年に文部科学省が出したスポーツ振興計画には「総合型地域スポーツクラブとは地域住民が主体的に運営するスポーツクラブの形態である。」と記され、その必要性が明記されています。

双葉町にはもともと7つの少年団が個別に活動をしていましたが、2000年4月に
これを一つにまとめて、総合型地域スポーツクラブ「双葉ふれあいクラブ」を誕生させたのです。

双葉ふれあいクラブの特徴は、「教室部門」と「サークル部門」の二本の柱があることです。

「教室部門」は選手の育成を目指すもので、これまでのスポーツ少年団としての活動がおこなわれています。参加できるのは子供に限られています。

一方の「サークル部門」は、楽しみのために行うスポーツで、大人から子供まで参加できます。なんとここには、ヨサコイソーランのサークルもあります。
競技スポーツは苦手だけれど、踊ることは大好きという子供たちが、嬉々として踊っている姿がありました。

双葉ふれあいクラブのクラブハウスには、事務を行う専任の有給職員がいて、活動のスケジュール調整や管理を行っています。事務の高野さんがホワイトボードにぎっしり張られたスケジュールを見ながら説明をしてくださいました。
「上がサークル活動で、下がスクール活動になっています。火曜日と水曜日に活動が多いかなと思うんですけれど。」

町や学校の体育館を使って行われるこうした活動のために、このクラブハウスでは、体育館やグランドの鍵の管理を行っています。夕方、勤め帰りの指導者でしょうか、カギを受け取りに次々にクラブハウスにやってくる方たちの姿がありました。

水曜日の夜7時、学校の体育館を覗いてみましょう。

体育館の一階では剣道と柔道のスクールと呼ばれる子供たちの育成プログラムが行われていますが、 これが2階へ行くと違う活動が行われています。二階では卓球のサークル活動が行われています。年齢に関係なくスポーツを楽しむと言う活動です。」

卓球サークルには仕事を終えて帰宅後、夕飯を済ませてからこの会場にやってきている女性たちがいました。
「普段運動不足だったんで、来るようにしています。」
「ストレス解消にやってきました。卓球だけでなく、バドミントンや、バレーなど、違うものに挑戦できるのがいいですね。」
「このクラブが出来るまでは?夜の時間はどうしていらしたんですか?」
「夜はごろごろしてました。スポーツはぜんぜんやっていません。」

中には親子で卓球をしている人もいました。
「お母さんとどうですか?」
「そんなにやさしくない。ミスすするとすぐおこられる。」
まん丸の目をさらにくりくりさせて、子どもは屈託がないですね。
お母さんは苦笑いでした。

卓球を始めたばかりの子供から、ストレス解消を目的にした若い女性、そして、ベテランの大人まで、幅広い層の人々が、夜のひと時をこのサークル活動で楽しんでいました。

双葉ふれあいクラブの年会費は大人が5000円、子供が4000円です。
ふれあいクラブが出来てから2年半。今では7600人の町民の一割が会員です。
小学校高学年にかぎって言えば、なんと、57%が会員になりました。

「サークルではテニスとバスケットをやっています。」「バドミントンとサッカーふたつやっています。」
今では掛け持ちで複数のスポーツを楽しむ子供たちも出てきています。
小さい頃からひとつだけを集中的に行って、バーンアウトして、結果的にスポーツとの縁を早い段階で切ってしまう子どもたちが増えている中、複数種目をこなすことは大きな目で見ると、とてもいい影響があると思います。

総合型地域スポーツクラブになって、よくなったことに、若い指導者が増えたことがあります。指導者自身もサークルで自分の好きなスポーツを楽しむことができるようになったからです。

すべてがうまく回り始めている双葉ふれあいクラブには、今では全国から視察にやってくる市町村が絶えません。応対するのはクラブGMの佐々木清一さんです。

スポーツ指導者としも長いキャリアを持つ佐々木さんは、どうすれば、スポーツが得意でない子供たちを一人でも多くクラブに取り込めるかを考えたといいます。

「スポーツ少年団は競技志向型ととらえていますから、それ以外のもの、楽しみながら、親子で出来るものをつくっていこう。今の子供たちは、やる子とやらない子と完全に分かれちゃっているんで、その辺を救うという言葉はちょっと大げさかもしれないですけれど、スポーツをする機会を持ってもらえればいいなということで、そこが総合型のよさかなと思っているんですよ。」

選手になりたい子供はスクールで。
スポーツを楽しみたいという子供はサークルで。
スクールとサークルの二つの柱を作ったことで、子供たちにとってのスポーツの敷居が
ぐんと、低くなったのかもしれません。

日本のスポーツは長い間、学校と、企業に支えられてきましたが、
企業は、この不況の中でまずスポーツから切り捨てていきました。
また、学校体育も、少子化と過疎化、更には教師の高齢化などから部活動が立ち行かなくなってきています。もはや学校と企業に頼れなくなってきた日本のスポーツ。
地域でスポーツが出来る新しい枠組みを考えていかなければならないとする文部科学省が提唱する総合型地域スポーツクラブへのアプローチは現在様々な形で行われていますが、今回は子供たちの活動を中心にしたスポーツ少年団からの移行を取り上げてみました。

幼い頃から身体を動かすことをしない子どもは、転んだときに手のつき方を知らず、骨を折ったり、顔面から着地するといいます。人間の本来の持っている力を呼び覚ましてあげるためにも、小さいときから身体を動かして外で遊ぶ環境、スポーツをする環境を作ってあげたいものだと切に思いました。

←前のページへ戻る
 
   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー