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8月18日 オリンピック個人参加
シンクロ選手は現代の人魚
フランス国際シンクロ大会から その2 
  「メイクから始まる戦い」

水面に弧を描きながら優雅に泳ぎ、その美しさで人間の魂をとりこにする人魚。
人魚は美しいものと昔から決まっていました。

現代のマーメイドたち、シンクロナイズドスイマーたちにとっても、美しさは重要なファクターです。試合直前の控え室を覗いてみると、そこには美と格闘する彼女たちのもう一つの姿がありました。

井村コーチに髪を直してもらう武田選手
まず重要なのが、髪です。

髪を梳かし、ぎゅっと一つにまとめて縛り、何十本というピンでとめます。
そして、ここからある儀式が始まります。
各国のコーチたちはコップに白い粉を入れ、そこに熱湯を注ぎ込み、攪拌を始めます。
その液体をたっぷりと染み込ませた刷毛で、選手のまとめた髪を撫で付けていきます。ゆっくり丁寧に、後れ毛を持ち上げるようにしながら隅から隅まで塗りつけていきます。

一体何を塗っているのでしょうか。

水中で逆さまになってスピンをしながら、その後急に水面に出てきても、髪の乱れはほとんどありません。ぴたっと入水する前と同じように撫で付けられています。この状態を保つためのものが、あの儀式だったのです。

髪飾りも工夫します

白い粉の正体は「ゼラチン」。

夏に果汁に混ぜて冷蔵庫に入れておくとぷるんぷるんのゼリーが出来上がるあの、ゼラチンです。ゼラチンは温かいと液状ですが、冷えると固まる性質を持っています。その性質を利用して、シンクロの整髪に使われているのです。温かい状態で頭に塗られたゼラチンは、水の中に入って固まり、髪が水中で乱れるのを防いでくれるのです。

髪の乱れは大切な試合では印象点に響きます。各国の選手とも、コーチが丁寧にチェックをしているのが印象的でした。すでにこの段階で試合は始まっているのですね。

さて、このゼラチンを塗りつけたあと、髪飾りやハットをつけます。こうした小物は水着と合わせてコーディネートされ、選手たちにとっては舞台衣装も同然です。演じる作品のにあわせて作られています。
カラフルな布を縫い合わせて作ったものやスパンコールが散りばめられたものなど様々です。コーチや母親が作ってくれるケースもありますし、選手自身が作る場合もあります。

一人で、ソロ、デュエット、チームの3種目に出場する選手の場合ですと、それぞれ、テクニカルルーティーンとフリールーティーンがありますので、全部で6種類の水着と髪飾りを用意することになります。

シンクロ選手たちには、自分が肉体で表現していくと言う喜びとあわせて、こうした衣装作りからかかわっていくという楽しみ、一つの作品を様々な角度から作っていくという楽しみがあるようです。

こんな髪飾りも素敵
シンプルでこれもいいですね
お化粧をしながら
気持ちを高めていきます
さて、仕上げはメイクアップ。
これから観客の注目を一身に集めて演技をする人魚に変身するための大切な時間です。
水の中で、いかに表情が生えるように見せるか、一人一人がそのテーマに沿ったメイクをしていきます。その真剣なまなざし。

試合直前のこうした一連の時間をどのように過ごすかが選手たちにとっては特に重要です。トップスイマーを見ていると、無駄が全くありません。よどみなく、速やかに作業をこなし、心を落ち着け、自分の出番の時間を待っています。

ああっ!こちらは試合の後のアトラクションのメイクアップ。全てが終了した後は、工夫を凝らした思い思いの奇抜なメイクで観客を楽しませてくれます。こんな楽しみもあるので、フランスのお客さんたちはシンクロが大好きなようですよ。
うふふ・・・こんな楽しいメイクもアトラクションならではです。

 
スポーツ古今東西
 
モスクワ大会に始まり、ロス、ソウル、さらには冬の大会も経験し、シドニー大会がなんとオリンピック取材10回目になる宮嶋泰子アナウンサー。取材ではその選手の持っている「根」を掘り起こそうと歳甲斐もなく?大声を張り上げて走り回り、スポーツを縦から見たり横から見たりと大忙し!他とは一味違うスポーツ企画をこのコーナーでぜひお楽しみください。
 
 
    
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