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3月19日 速報!シンクロ・日本デュエット優勝

パリから車で北へ2時間ほど走ったところにアミアンと言う町があります。
この町で3月15日から18日までの4日間、フランス国際シンクロナイズドスイミング競技会が開かれました。
髪をひっ詰めて闊歩する美女たちで急ににぎやかになったアミアンの町から今回lはお伝えしましょう。


荘厳な雰囲気の大聖堂


中世にワープしてしまいそう

アミアンは世界最大のゴシック寺院があることで有名で、パリから日帰り観光で訪れる人も多いとのこと。1220年に建て始められたこの大聖堂、その姿は荘厳そのもので、霧が立ち込めた日など、この寺院の横に立っているだけで中世の世界に迷い込んだような錯覚に陥ります。
「薔薇の名前」と言う映画がありましたが、なんだかその映画の中の僧侶たちが今にも寺院から出てきそうな感じです。

寺院の中は息が白く見えるほどで、外気よりも一段と冷え込んでいました。
ステンドグラスのくすんだ赤や青の色のせいでしょうか、いつしか心がすうっと落ち着いてきます。


ステンドグラス

大理石の壁に反響して耳に入ってくる声はこの世のものではないように思えます。
何百年と時間が止まっているかのようなこの寺院の中で、どれだけの人々が、己のこころを見つめてきたのでしょうか。

日本からこのフランス国際大会に出場した立花美哉選手と武田美保選手、そして、彼らを率いる井村雅代コーチもこの寺院の中で、しばし心の安静を得たことでしょう。
常に勝負することを求められ、そのために日々限界ぎりぎりまで自分を追い込んでいく選手や指導者にとってはとても貴重な時間だったかもしれません。


美しい脚に圧倒されました

さて、試合は、オリンピックゴールドメダリストのロシアが直前に出場をキャンセルしたものの、中国、スペイン、ギリシャ、エジプト、日本にフランスと、シンクロに力を入れている国々がそろいました。
シドニーオリンピック以来、半年ぶりに顔を合わせる選手たち。こうして久しぶりに一堂に会する喜びが一段落すると、早速、激しいバトルが展開されていきます。


デュエットに出場した選手たち

この半年間で他国は何をやってきたのか、今年7月に行われる世界選手権にどんなプログラムを用意しているのか、互いに腹の内の探りあいを始めるのです。

日本のデュエットの立花・武田組も今回新しい作品を発表しました。練習のときから、各国コーチのビデオが回り、メモをする姿が見られます。
一度公表すれば、その演技のアイディアはすぐに盗まれるシビアーさ。
ある国はオリンピックのときと同じプログラムを持ってきています。この4月の大会ならば逃げ切れるけれど、そのプログラムで、果たして世界選手権まで
持つのかどうか、審判はそれをどのように判断するか、様々な作戦と思惑が交錯するのが、4月のこのフランス国際なのです。


立花・武田両選手と井村コーチ

いつもはフランクな井村コーチもバリアーをはって、人を寄せ付けないほどの緊張感を漂わせています.。
デュエットの予選の日、選手たちの気持ちがぐうっと集中してしていくのがわかりました。
ここでの評価がベースとなって、7月の福岡での世界選手権での評価がなされるだけに、失敗は許されません。

軽快な音楽にのった演技をじっと見つめる井村コーチ。厳しい目つきの表情。中盤、お客さんの笑い声に白い歯が一瞬こぼれました。

これまでの日本のイメージを180度転換させる斬新な振り付けとアイディアは審判に高く評価されただけでなく、
観客にも大受けでした。簡単に言うならば、それは「水中寸劇パントマイム」。
フランスのお客さんたちは笑って欲しいところで予想以上に笑ってくれたのです。それも、演技が終わった後の拍手の凄いこと!
シンクロの競技でこんなふうに拍手が鳴り止まないのを聞くのは初めてです。
もう感激でした。


デュエット優勝の立花・武田組

私自身、このお披露目をドキドキしながら見ていたのですが、パントマイムの万国共通表現のパワーを強く感じさせられると同時に、
ここまで苦労してきた井村コーチのホットした表情を見た瞬間、その顔が涙でぼやけてしまったほどです。
このデュエット作品はこれからまだ、どんどん改良が加えられていきます。さらに面白くなるのかと思うだけでわくわくしてしまいます。
でも、油断は禁物。この作品からヒントを得た各国が、7月までに何をしてくるのか、さらに、今回は出場していないロシアにもおそらく来週にはこの日本のデュエットのビデオテープが届いていることでしょう。

相手がどんな演技をしようと、「ここまで激しい動きをよくこの細部まで合わせた!」と審判員をうならせる演技をすれば、日本のシンクロ至上始めての世界選手権金メダルも夢ではない、井村コーチと立花・武田選手の夢は広がります。

 
スポーツ古今東西
 
モスクワ大会に始まり、ロス、ソウル、さらには冬の大会も経験し、シドニー大会がなんとオリンピック取材10回目になる宮嶋泰子アナウンサー。取材ではその選手の持っている「根」を掘り起こそうと歳甲斐もなく?大声を張り上げて走り回り、スポーツを縦から見たり横から見たりと大忙し!他とは一味違うスポーツ企画をこのコーナーでぜひお楽しみください。
 
 
    
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