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11月27日 有り難う!東京国際マラソン

東京の晩秋の風物詩となった東京国際女子マラソンが今年も行われました。ご存知の通り、シドニー五輪から2ヶ月弱の期間にもかかわらず、銅メダリストのケニアのチェプチュンバがアフリカ勢として初めて東京を制しました。チェプチュンバについてはこのコラムでも夏に取り上げたので、親しみを持ってレースをご覧になった方もいらしたことでしょう。ケニアでは9歳になる男の子が待っているお母さんランナーです。とても気持ちがやさしくて、誰にでも親しげに話しかける魅力的な女性です。

ところで、この東京国際女子マラソンが初めて行われたのはいつのことか、皆さんはご存知でしょうか。
それは1979年のことでした。ええっ!まだ生まれていないですって?
第一回の東京国際女子マラソンは世界で初めての女性だけのマラソンレースとして国際陸連の公認のもと行われました。そして、その成功によって、5年後のロサンゼルスオリンピックから女子マラソンが正式種目として採用されたのはあまりにも有名なことです。
ですから、東京のマラソンを育て上げてきた人々には、自分たちが女子マラソンの草分けであるという自負心があります。その中には第一回大会から出場している選手の皆さんもいます。また裏方として地道に大会を支えてきた役員の方々もいます。彼らにとって、シドニーのオリンピック女子マラソンで高橋尚子選手が金メダルととったことは、えも言われぬ喜びだったのです。

かく言う私も、第一回大会以来、東京の秋空の元、色とりどりのコスチュームで走り抜けてきた女性たちの姿を見つめ続けるチャンスに恵まれてきました。第一回の時は、最初の給水ポイントの10キロ地点(当時は日比谷のあたりでした)のリポートと、国立競技場での優勝インタビューを担当しました。その時優勝したジョイス・スミスさんに「なぜハンカチを持って走り続けたのか」と質問した時のことを今でもはっきりと覚えています。女性として、唾を吐くのがためらわれたのでハンカチを使ったというジョイスさんの答えはあまりにも新鮮で、軽いショックを覚えたほどでした。

今回で22回になるこの大会、沢山の心に残る選手がいるのですが、なかでも、私が大好きな選手といえば松田千枝さんです。第一回大会から出場し、昨年と今年はお嬢さんと一緒にレースに参加しています。
27歳から走り始め、37歳で自己最高記録をマークして東京で4位に入賞。ハワイのトライアスロンレースを日本女性として初めて完走、52歳となった今も美しい走りを求め続けています。
いつお会いしても、にこやかで、ご一緒にいるだけで、こちらが元気になってくるような、そんな方です。走ることの楽しさを教えてくれた夫の泉さんは、今では千枝さんのスペシャルコーチで、最大の理解者です。松田家の人々とお話をしていると、「ああ!こんな家族っていいな」と思わずにはいられません。

今回レースの前日に、「本を出したのですが、よかったら読んでみてください。」と一冊の本を手渡されました。松田さんの半生を振り返るとともに、走ることの楽しさ、人生の豊かさ、自然のなかで生きる喜びなどが、独自のランニング哲学とともにちりばめられています。(「ランニングの贈り物・家族とともに」求龍堂)

「ランニングの贈り物」求龍堂 裏表紙には家族で走る姿が

あっと言う間に読んでしまいました。心があったかくなり、豊かな気持ちにさせられました。もし、あなたの身近にジョギングを楽しんでいる方がいらしたら、この本を贈ってみるととてもステキなプレゼントになるかもしれませんね。最近ちょっと元気がなくて、と言う方にもおすすめです。読んだ後に、さあ、私もがんばろうと言う気持ちになるから不思議です。

夫との出会い、走る喜びへの目覚め、出産、子育て、ランナーとしての成熟、怪我、悩み、各界の道を究めた方に教えを請う真摯な姿勢、そして新たなる走りの創造、親子でのレース出場・・・・・松田千枝さんの女性としての人生は、この東京のマラソンに重なり合って豊かさを増してきたようです。

松田千枝さんというステキな女性と私が出会えたのも、東京国際女子マラソンのおかげです。そして、今年の大会では戦禍の東地ティモールで走り続けてきたアマラル選手に出会うことができ、彼女からまた新しい勇気をもらうことができました。

今更ながら、大会に「有り難う!」と大きな声で感謝したい気持ちです。

 
スポーツ古今東西
 
モスクワ大会に始まり、ロス、ソウル、さらには冬の大会も経験し、シドニー大会がなんとオリンピック取材10回目になる宮嶋泰子アナウンサー。取材ではその選手の持っている「根」を掘り起こそうと歳甲斐もなく?大声を張り上げて走り回り、スポーツを縦から見たり横から見たりと大忙し!他とは一味違うスポーツ企画をこのコーナーでぜひお楽しみください。
 
 
    
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