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身長
154cm
出身地
宮崎県
出身校
宮崎西高校→
慶応義塾大学総合政策学部
入社年月日
2002年4月1日
星座
獅子座

2017/3/10 ミニホールのある酒屋さん

再び気仙沼へ。


3月5日

前回、色んな人たちに出会ってこんな話を聞いたよと、スタッフに話したところ、
放送でお伝えしたいねということで急遽決まり、
今度は日帰りで仕事として行ってきました。
今週も、そこで感じたことを少しだけ。

こちらは6年前、津波と火災で町ごと壊滅的な被害を受けた鹿折地区です。

工事が続き土煙が上がる中、
去年、嵩上げが済んだ場所に公営住宅が完成しました。
家賃が発生するので、たとえ住み心地が悪くても退去を求められるギリギリまで仮設住宅に住む方もいると聞きましたが、
既に入居した方でしょうか、日差しを受ける洗濯物に人の営みを感じました。
近くには一気に3店舗のコンビニ。
そして新しくできた酒屋さん。


2月25日

『すがとよ酒店』の女将さん、菅原文子さんです。
津波で夫と義理のご両親を亡くし、その後、仮設店舗で営業を続けていましたが、
去年12月、ついに息子さんとともに鹿折地区の公営住宅からほど近い場所に本設の店をオープンさせました。
「あのころは本当に辛かったし、何もかもなくなって…
家族はいないし地域もダメになったし商売なんか見通しが立たなかったですよね。
だけど、そんな中で、余計にその地域とか人のご縁とかつながりがどんなに尊いものかって分かりました。」
鹿折にオープンした店舗は、菅原さんのそんな思いが詰まったものとなりました。
というのも、実は店舗の2階に特徴があるんです。


2階には…許可をいただいて音を鳴らしてみました。

30人ほどが入れる部屋に、支援で届いた手作りのグランドピアノ。
そう、なんと「ミニホール」のある酒屋さんなんです!
ここを「人が集まれる場所にしたい」、と文子さんはおっしゃいます。
「仮設住宅では長屋のようだったけれど、公営団地となると、お年寄りはなかなか外にも出なくなるんじゃないかと思って。皆さんが集まれるきっかけになるような場所を作りたかったんです。」

実際に公営住宅の方に話を聞いてみると、複雑な思いを明かしてくれました。
綺麗な場所に住めるのはとても嬉しい。
一方で、仮設住宅で知り合った人たちがバラバラになってしまった。
せっかく築いた人間関係がスタートラインに戻っている。
今は隣同士ですら誰が住んでいるか分からない。
ここからまた新しくコミュニティーを築いていかなくては。

今までひとところに寄り添って乗り切ってきた方達が町の中に散らばっていく、
菅原さんは、再びその方たちをつなごうとしているのだと感じます。
「橋を作るとか道を作るとか、そういうのももちろん大事な復興だと思うけれど、
そういった大きなくくりの中で、ちっちゃな一人一人の心の中に、
出会えてよかった、戻ってきてよかった、という喜びを少しずつ膨らませたいなと思って。」
人がつながって、そこから小さな喜びが生まれて、
その思い出の積み重ねとともに町が少しずつできていく、それが「復興」なのかもしれません。
震災前の鹿折の賑わいをかき集めるような思いで、
いま、そのスタート地点に立っていらっしゃるようでした。

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