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5月28日 運命の6月19日


「一人で見る夢は単なる夢である。
しかし、みんなで見る夢は現実となる。」
5月3日福岡、真壁刀義のIWGP初戴冠はまさに、「夢」が「現実」となった瞬間でした。
身体ひとつで新日本プロレスに入ってきた真壁伸也。
奇しくも、初めて新日本プロレスの道場に足を踏み入れたのは、橋本真也が高田延彦からIWGPを取り戻した次の日でした。
同期入門はスーパーエリートの藤田和之。
辞めさせるための練習にも耐えて、プロレスラーでいることを諦めなかった。
補導歴もある。
胸張って世間に対して言えることは一つしかなかった。
「俺はプロレスラーなんだ。」
13年2ヶ月たって、ようやく掴んだ「IWGP」。
その「場所」に実況アナウンサーとして、立ち会えたのは最高の瞬間でした。

そして、来る6月19日。

テレビ朝日は、この日、W杯南アフリカ大会の「日本対オランダ」戦を中継します。
グループステージの第2戦、なおかつ、試合開始は日本時間の夜8時半からとあって、日本中の注目が集まるのは間違いありません。
そして、ここで問題なのは、全く同じ日に、大阪で新日本プロレスのIWGPタイトルマッチが組まれていることです。
私は南アフリカW杯中継のため、6月3日から南アフリカに入ることが決まりました。
ですから、当然、6月19日は南アフリカで「日本対オランダ」戦を中継することになります。
保育園から大学の体育会まで、「サッカー」に全てを捧げてきました。
人生で何をやってきたのか?
胸を張って答えることができる言葉は「サッカー」です。
サッカーに携わる人間にとって、「W杯は夢の舞台」。
一人で「夢」を見ていた学生時代。
テレビ朝日に入社し、「夢」が「現実」になりました。

ただ、正直、6月19日、夢と現実の狭間で、
大阪で行われる新日本プロレスの闘いを実況できないことは残念です。
私の原点は間違いなくプロレス実況です。
プロレスで養い、培った、不屈の魂が、全てのスポーツ実況の根底に頑として存在しています。
自分では「プロレスの吉野」があってこそ、南アフリカW杯に派遣されるのだと感じています。
だからこそ、6月19日、運命の悪戯を恨めしく思うとともに、勝手な思い込みとして「プロレスの吉野」が南アフリカW杯で果たす責任を感じています。

全世界が注目する4年に一度の祭典において、「プロレスの吉野」はどこまで通用するのか?
歴史的な瞬間に立ち会える喜びと、試練。
これは「プロレス」を取るか、「サッカー」を取るか、という消極的で、自虐的な問い掛けではないのだと確信しています。
アフリカ大陸でのW杯という、未曾有の試練を前に、「ワールドプロレス」を背負って臨む決戦なのです。
プロレスで殴られ、プロレスで泣き、プロレスで笑い、プロレスで感動した、
全ての想いを力に変える覚悟があります。
闘魂を胸にアフリカの大地で大いなる喜びと、大いなる試練を味わってきます。
そして、帰国してから、古澤アナ、大西アナ、野上アナ、三上アナ、の熱き実況に酔いしれようと思います。


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