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2月27日 中野監督


皆さんは知っているでしょうか?
日本代表に勝った大学生チームが存在することを。
さらに今年度、そのチームが、Jリーグに11名、Kリーグに2名、JFLに5名を送り込む快挙を達成したことを。

偉業を達成したのは「流通経済大学サッカー部」。
今年、強豪揃いの関東大学リーグを史上最高の成績で優勝。
さらには、J1、J2の下のカテゴリーである、JFLでは18チーム中6位に入り、フェアプレー賞を受賞するなど、大学サッカー界で破竹の勢いを見せています。

10数年前までは、大学サッカー界で全くの無名校だった流通経済大学。
その流通経済大学が、如何にしてこのような偉業を達成することができたのか。
個人的に大学サッカー出身ということもあり、この「奇跡の成長」に興味を持ち、取材してみました。

キーワードは「最高の施設」「能力の高い選手」「人間としての成長」「地域への貢献」という4つです。

まず、最初のキーワードは「最高の施設」。
チームを率いる中野雄二監督は話します。
「11年前にこのチームを引き受けた際は、『優勝』を目指すことなど、とても口にすることはできなかった。
練習に全部員が集まらないのはあたりまえ。ほとんどの学生が喫煙している。コーチはいない。寮も試合のできるグランドもない。」
まさにゼロからスタートし、中野監督は現場のチームを仕切る監督としての役割は果たしながら、時に交渉術に長けたゼネラルマネージャーとして「学生と一体となってサッカーがやれる環境」を整えて行きました。
「流通経済大学サッカー部」は全寮制です。
全部員190人が二つの寮に分かれながら、共同生活を送っています。
例えば、この「寮」についても、単に大学側が無条件で与えてくれたわけではありません。
中野監督自ら、グランドからのアクセスを考え土地を探し、その土地の地主さんと交渉し、土地を借り受け、リスクを背負いながら立てた「情熱の城」であるわけです。
現在でこそ、茨城県の龍ヶ崎にある、サッカー部の施設はJリーグも顔負けの、最高の設備と最高の練習環境を誇ります。
しかし、それらの全ては、中野監督のリスクを抱えながらの「行動力」と「情熱」の賜物であるわけです。
続いてのキーワードは「能力の高い選手」です。
今年度、Jリーグに進む11人のうち、実に5人が流通経済大学付属柏高校の出身です。
流通経済大学付属柏高校は、2年前の高校サッカー選手権で全国制覇を達成した強豪校です。
その強豪校から毎年、多くの部員が大学サッカー部に入部してくる、高校、大学を通じての一貫教育システムを確立できたことも飛躍の理由の一つなのです。
「高校で駄目でも、大学で花が咲く選手は沢山いる、大事なことは、あきらめずにサッカーを続けること。」
これは、主将を務め、今季より新潟アルビレックスに入団した三門雄大選手(流経柏出身)の言葉です。

「最高の施設」、で「能力の高い選手」を競わせれば、それなりの成果は挙げられると思います。
ただ、それだけが流通経済大学躍進の秘密ではありません。
続いてのキーワードは「人間として成長すること」。

中野監督は今年度、11名もの人材をJリーグに送り込むことができた理由を問われ、次のように語っています。
「まず、選手個人の努力がある。
そして、日本中の大学の中で何処よりも素晴らしい施設があることもプラスには働いている。
しかし、能力の高い選手を最高の環境で鍛えても簡単には強くならない。
一番大事なのは、全寮制という共同生活の中で、人間として成長できたことが大きいと思う。
まず、人間としての成長があって、その上でサッカーの分野で花開いた結果が、Jリーグに11人、Kリーグに2人、JFLに5人、地域クラブに8人、合計26人がプロ契約、あるいはセミプロ契約を結び卒業してくれたことに繋がっていると思う。」

中野監督は奥様と共に、約190人の部員と寮で共同生活を送っています。
奥様自ら、約190人の食事を作っています。
夫婦で寮に住み込みながら、学生達が「人間として成長する」ことを見守っているわけです。
寮生活で特に注意していることは何ですか?という質問を中野監督とももに、チームを率いる大平コーチにぶつけると、次のような答えが返ってきました。
「トップチームやJFL組に入れなかった選手たちには、率先して寮で話しかけている。」
「寮生活でしっかり生活ができている人間には率先してチャンスを与えている。」
「他の選手達が、あいつならしょうがない、と思わしめる努力をしていれば、チャンスを与えてもみんなが納得する。」
「最高の施設」、「能力の高い選手」、そして「人間として成長する場としての寮」も流通経済大学の強さの秘訣なのです。
最後のキーワードは「地域への貢献」です。
流通経済大学サッカー部の試合には、「流通経済大学サッカー部を応援する街の応援団」という、龍ヶ崎市市民で形成されている応援団が駆けつけています。
実は、この応援団が誕生するきっかけは、サッカー部のボランティア活動からでした。
サッカー部では、毎週火曜日に、全部員で近くの公園でゴミ拾いを行っています。
その姿を見て、近所の方々が、自発的に組織したのが、「流通経済大学サッカー部を応援する街の応援団」です。
中野監督は
「おこがましい言い方かもしれないが、Jリーグの地域密着の理念を大学レベルでもできるということを示したかった。
だから、試合や練習を見に来てくれる地域の方々の応援は本当に嬉しい。」
と話します。

「最高の施設」「能力の高い選手」「人間としての成長」「地域への貢献」
これらの要素に人間「中野雄二」が核となって、流通経済大学サッカー部は「奇跡の成長」を遂げました。

これからも定期的に、自分の原点である、「大学サッカー」について取材していきたいと思います。
 
 
    
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