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4月11日 僕がボブ・サップになった日。

 
事のはじまりは突然でした。
永田選手が、私の隣にいた古澤アナに
 
永田選手  :  「トレーニングウェア持ってきた?」
古澤アナ  :  「いえ、持ってきてないですけど。」
永田選手  :  「駄目じゃん、一緒に練習できないじゃん。
じゃあ、貸すから着替えて。」
古澤アナ  :  「いえ、私、年末にぎっくり腰で、
練習はちょっと厳しいですね・・・。」
永田選手  :  「あれ、隣は?」
古澤アナ  :  「新人の吉野です。」
吉野  :  「初めまして。新人のアナウンス部の吉野です。
宜しくお願いします。」
永田選手  :  「新人なんだ。よし、じゃあ、着替えて。一緒に練習。」
吉野  :  「え、いや、はあ・・。え、本当ですか?」
永田選手  :  「さあ、さあ、着替えて。」

先日、ワールドプロレスリングの取材で、新日本プロレスの道場に行ったときのこと。
取材内容は、道場で行われる合同練習を取材し、合同練習後にタイトルマッチを控える、IWGPヘビー級王者の永田選手にインタビューするといったものでした。
小さいころから大好きだった新日本プロレス。その聖地、野毛道場を見学できる。
入社してから、こんなに嬉しい仕事はないと思って、意気揚揚で道場に入ろうとした、
まさにその時、上記のような会話が交わされました。

こうして、突然、私は新日本プロレスの合同練習に参加することになったのです。
まず、考えたのは、去年まで大学でサッカーをやっていたとはいえ、入社してからは、ほとんど身体を動かしておらず、厳しい練習に耐えられるのかということです。
しかし、根っからのプラス思考の持ち主である私は、憧れの道場で、憧れのレスラーと練習できるチャンスというのは滅多に経験できないことだと思い、練習参加を決心しました。
そして、やるからには真剣に、全力でやろうと決意しました。

まず、準備運動としてスクワットを260回やりました。途中から足がガクガクきましたが、気合で乗り越え、次は、縄跳び。3分間を3セットやりました。酸欠でフラフラになりながも、時折、聞こえる永田選手の「オラー、足動かせー。」の声に助けられつつやり遂げました。
この時点で、限界を感じていました。ただ、次のメニューを聞いて、闘争心が再び沸き起こりました。
永田選手「リングの上で、プッシュアップ。20回×4セット。」
「え、リングの上?」「俺、新日本のリングに上がれるの。」「よし、頑張ろう。」

今考えると、酸欠でまともな思考ができていなかったのだと思います。
気が付いていたら、リングの上でプッシュアップの体勢を整えていました。
しかし、身体は正直で、身体中の筋肉が小刻みに震え、自分の身体を支えるのがやっとでした。
その時、ドスのきいた低い声で「オイ、吉野君。声だけでもいいからしっかりな。」
と中西選手が声を掛けてくれました。
私は必死に自分の身体を支え、大声を出していました。
プッシュアップが終了し、ここでようやく準備運動が終わりました。
私の筋肉も終わりました。

そして、小休止の後、筋肉トレーニングが始まりました。
私は、棚橋選手と矢野選手と組ませて頂きました。
酸欠で顔面蒼白になりつつも、正しい姿勢を維持することに意識を集中させ、必死に筋肉を鍛えました。
棚橋選手と矢野選手が、信じられない重さで練習しているのに驚きつつ、その半分以下の重さで悲鳴を挙げている己の貧弱さを痛感していました。
この後も、リングの上での組み手、タックル、間接の取り合いといった基本練習に参加させて頂きました。

最後に、永田選手の提案で練習に参加した記念に、中西学選手から逆水平チョップを頂くことになりました。あの、ボブ・サップと戦った中西選手の逆水平チョップを受けることができることに感謝し、歯をくいしばり、胸に力を入れ、その瞬間を待ちました。
そして、ついに、リング上で、全ての選手が見守る中、私の胸板目掛けて中西選手の逆水平チョップが炸裂しました。
私は、一直線にロープまで吹っ飛びました。
そして、嬉しさと強烈な痛みとが交じり合う何とも言えない不思議な気分で、
中西選手に向かって大声で、「ありがとうございました。」と感謝の気持ちを伝えました。

この経験を通じて、プロレスラーの強靭な肉体を再確認するとともに、プロレスラーの真摯に練習に取り組む姿勢に感銘を受け、プロレスに対するリスペクトの念を強くし、ますますプロレスが好きになりました。
そして、私も、こうして己の命を賭けて闘っているプロレスラーの熱い闘いを実況したいと強く思いました。

私の胸には「闘魂」と中西選手の大きな手形が痣としてくっきり残りました。
 

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