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10月24日 拉致被害者の報道に思うこと

 
24年ぶりに日本に一時的に帰ってきた拉致被害者5人を羽田空港で見た。取材中にも関わらず、私は言葉を失い呆然と肉親との再会を見つめていた。笑顔と涙を見せる関係者を見て鳥肌が立った。

今思い返して、あの羽田で一番目に焼きついているのは、5人ではない。横田めぐみさんの両親、有本恵子さんのお母さんだ。再会の瞬間を自分で写真に撮ることができない5人の家族のためにカメラを手にし写真を撮り、自分のことのように花束を渡し喜び涙していた。

そして、メディアは連日、この5人と家族を感動的に報道している。
ドキュメントのVTRに美しい音楽をつけ、しっとりとしたナレーションをのせる。
スタジオでは笑顔で涙でコメントをする人。そんなシーンを連日目にする。

でもそれでいいのか?
しかし引き裂かれた家族の気持ちを想像するとそんな美談では決してない。いや、当事者以外の人間があれこれ表現することができないほど辛く恐ろしい出来事だったのだ。

今回の一時帰国に関しては私はとても笑顔で報道することができない。「よかったね」「感動の再会だね」なんていう簡単な言葉で家族を表現していいものではない。

忘れてはいけない。
彼らには近く、また別れがある。そして未だに我が子を抱きしめる事ができない拉致被害者の家族がたくさんいる。この現実を知っている以上、メディアは冷静に、客観的に報道するべきだと考える。

   
 
    
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