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3月16日 サプライズ“謝恩会”と“誕生日”


アナウンススクール・テレビ朝日アスクの学校長をしている身にとって
この時期は旅立ちの見送りの時期でもあります

今年4月入社で、日本全国に40人近い教え子が
新人アナウンサーとしてデビューします
http://www.tv-asahi-ask.co.jp/tv_asahi_ask/naitei_2010.html





それぞれ全国の新天地へ引っ越し手続きを終えて
今月中に旅立つ人が殆どです
私にとっても一昨年の4月に赴任以来
丸々2年間見続けてきた世代ですので、思い入れも一入です

そんな大学4年生の彼ら彼女らが
「3月12日(金)の夜は空いていますか?全国に旅立つ前に一緒に飲みましょう!」
と言ってきたのが2月中旬でした。
3月に入ってのある日、日程も迫ってきたので幹事役の生徒に聞いてみました
「どこでやるの?」「渋谷のお店で夜8時頃からです」
「何人ぐらい参加?」「あ、みんな色々忙しくて、すみません7〜8人くらいです」
「全然問題ないよ、忙しいのに7人も来てくれるんだ」

当日はアスクの「4日間集中基礎科Bクラス」の最終日でもあり
まずはそちらの別の生徒と、アスク(外苑前)近くの飲食店で
17:00頃から2時間の予定で懇親会に参加しました

「先生、そちらの懇親会が終わってお店を出る時に電話して下さい
アスクにも何人か内定者が待ち合わせで来ますので
先生の到着を待って、合流してから渋谷へ行きましょう」

結局4日間集中基礎科の懇親会の方が盛り上がり
終わったのが19:45頃 。45分もオーバーし、あわてて電話します。
「申し訳ない、盛り上がって、今ようやく終わったところで」
「はい、アスクでお待ちしております」

アスクに戻ってみると、幹事役の一人の生徒が1F受付で待っていて
「内定者の何人かがB1Fの教室で自主トレをしながら待っている」と言います
誰が来ているのかな?とトントンと階段を降りて行きました

「あれ・・・?おかしいな?B1F教室の部屋の照明が消えている・・・」

と、扉をあけると・・・

 

 

 

「松井先生!ありがとうございました〜っ!!」

突然明かりがついて、目の前に人、人、人の列が・・・
一瞬何が起きたか分からず、あっけにとられながら列の間を進むと
前方に椅子が用意されていて、そこに座ります
今度は彼らが教室の後ろにさっと移動して横一列に並び直します
いつの間にやら、揃いのTシャツに着替えています

「松井先生、2年間ありがとうございました!私たちは・・・・」

いや、驚きました・・・
あとから数えたら25人もの生徒が来ていました

揃いのTシャツの胸には「My.Children」の文字が
ミスチルさんではなく、私のイニシャルのチルドレンだというのです
背中には全国の新天地の地名がローマ字でプリントアウトされていました
聞けば、このTシャツ企画をした人物は1ヶ月近く前から準備をし
デザインを決めて、仲間からサイズをそれぞれ聞いて発注していたとか
実は、その人物がアナウンサーとして内定を頂いたのはギリギリの2月末なのです
自分の就職先も決まらない時から、そんなことをやっていたというのです



未だ呆然としている私をそのままに、白壁一面が大スクリーンに見たてられ
私へのメッセージDVDの上映会が始まりました
既に新天地で研修が始まっていて、この日会場に来られなかった内定者からも含めて
30名近くの生徒からのビデオメッセージです



いったい、いつの間にこんなに大量のロケをしたんだ、
撮影も編集も大変だよコレ・・・
この2年間の思い出のイベント写真も効果的に挿入され、
学生らしい楽しいテロップも多数 入り
感動的な映像は、実に13分にも及びました



「いやあ〜、ビックリしたよ!いったい、いつの間に作ったの?
それにしても、揃いのTシャツに着替えたからゴスペルサークルかと思ったよ」

と、照れ隠しのつまらないリアクションしか出来なかったら

またまた別の人物が前に出てきて、やおら指揮をするというのです
教室備え付けのエレクトーンには
いつの間にやら音大生の生徒がスタンバイしていて伴奏を始めます
そう、まさに“合唱”が始まったのです

初めて聴いた曲でしたが、やっつけ合唱ではありません
しっかりと練習をしたことが分かる、声量とハーモニー
途中、パートごとの掛け合いまで入っています
・・・いったい、いつの間に・・・

一人一人の顔を見ていると、歌いながら泣いている生徒が何人もいます
その一人一人が内定した時の状況が克明に浮かび上がってきます
いえ、内定した時よりも、ダメだった時の
励ましや、時には突き放しのシーンが思い浮かびます
誰一人、楽をしてアナウンサーになった生徒はいません
まさに苦楽を共にした教え子であり戦友です

自分で自分に驚きました
・・・私、人生初の号泣です
涙を見せても良い相手でした

 

そして別の代表者が出てきたかと思うと
立派な紙を取り出し、長い長い「答辞」が始まりました
実に具体例に富んだ思い入れたっぷりの文章でした



さらに手づくりの額縁入り大型パネルが私にプレゼントされました
50枚近くの写真が配置されています
一人一人が一文字ずつのメッセージシートを持っている写真も多数入っています
この写真、いつの間に撮ったの?・・・



そのあと、私からもみんなに感謝の言葉を述べることになったのですが
後にも先にも、途中何度も嗚咽で絶句するスピーチは初めてです
唯一の後悔は、この会の途中から自分でムービーを回してしまい、
この瞬間もカメラスイッチをオフにすることができなかったことです
みっともない映像が残ってしまいました

聞けばこのサプライズ“謝恩会”計画は4年生の有志が1ヶ月ほど前に企画発案し
アスク社長を始めとしたアスクスタッフ全員とも連絡を取っての綿密な計画でした
考えてみれば教室のシフト繰り、音響マイクやDVD上映装置の準備、
テーブルクロスの準備まで、アスクスタッフがいないと出来ません
まさに知らないのは私一人のみでした

夜10:30を過ぎると、会場を“本来の”渋谷に移しての2次会です
20人近くの生徒がそのまま参加してくれました
それどころか1次会に来られなかった生徒も合流してきます

つくづく「私は幸せ者だなあ〜」と美味しいお酒をしみじみ飲んでいたら
突然、店内の照明が暗転し、大声でカウントダウンが始まりました
「5・4・3・2・1・ゼロ!ハッピーバースデー!!松井先生!!」

そうなんです、私、日付が変わったこの3月13日が誕生日だったのです

もう何が何だか、何が起きても驚かないぞと思ったところで
店内に響き渡る誕生日BGMの中
一人の女生徒が、キャンドルに火がともった
バースデーケーキを持って店の奥から登場です
ハッピーバースデー!の大合唱の中、キャンドルを吹き消す・・・夢の続きです



あまりにも大勢の参加だったので、ケーキを切り分けることはせず
私が一人ずつの座席を回ってフォークで一口ずつ配りました
半数近くが男子生徒というのも、ごあいきょうですが・・・

翌日が大学の卒業式(!)だという女子大生もいたので
「ありがとう!もう大切な明日があるんだから帰りなさい。感動したよ!」
と伝えたのに、「いえいえ」と、これまた殆ど帰宅する人なく
カラオケBOXに移動して朝までallとなりました

私はシアワセ者です・・・

 

後でわかったのですが、
合唱した曲は最近の卒業式では定番ソングらしく、
それぞれ中学・高校時代に歌ったことがある生徒が大多数だったそうです

どうしても歌いたいと思った生徒が、歌詞カードを人数分コピーしてきていて
17:00からの4日間セミナー懇親会が伸びて、私の到着が45分近く遅れている時に
急きょ「やろう」とみんなに伝えたそうで、その場で2回だけの練習
メンバーの中に現役音大生がいたので
楽譜が無くても即興で備え付けのエレクトーンで伴奏
元々アナウンサー内定者ばかりですので
腹式呼吸と発声と思い切りは問題なしという集団だから出来たことだったみたいです

夜が明ける頃のカラオケBOXでの、みんなで歌った最後の曲が
再びこの曲になったのは自然の流れでした

・・・「旅立ちの日に」


 
2010年3月14日
テレビ朝日アスク 学校長 松井康真
   
 
    
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