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9月6日   ワールドプロレスリング実況三銃士の闘魂コラム#127
〜人の子〜

いまだ余韻覚めやらぬG1クライマックス。
棚橋弘至の優勝で幕を閉じたこの大会だが、
放送されなかった部分で個人的に非常に印象に残ったシーンがある。

決勝戦が終わり、各社からの表彰が行われた。
G1のような大きな大会では毎年、
雑誌社や新聞社が独自に賞を制定して活躍した選手に贈るのだが、
今年は真壁刀義に対して2社から賞が贈られた。

前日に行われた準決勝まで進出した真壁が受賞することに。
さして驚きはなかったのだが、
驚いたのはその真壁がリングに上がってきたことだ。

大抵の場合、こういった受賞の場に
ヒール(悪役)のレスラーが上がってくることはない。
あっても非常に稀だ。

特に真壁の性格を考えた時に、
優勝者の横でおとなしく賞をもらうとは想像しにくく、
だから我々も『真壁は上がってこないだろう』と思っていたのだ。

しかし名前が呼ばれると真壁はジーンズにシャツ、サングラスという普段着で
花道からリングに上がってきたのだ。
これには客席もどよめき大きな拍手を送った。

そして少しはにかんだ様子で、片方の口の端を「ニヤリ」と持ち上げ、
おとなしく賞を受け取ってリングを降りていった。
観客の歓声に軽く手を上げながら・・・



このG1の大会中、チェーンや椅子を使った凶器攻撃と
場外乱闘を繰り返した真壁だったが準決勝は違った。

多少の(「多少」と言うとまた微妙なのだが)凶器攻撃や場外乱闘はあったが、
セコンドによる介入もなく、
「真壁にしては」かなりクリーンなファイトであった。

スパイダー式ジャーマンやノーザンライト・スープレックスなど、
普段は見せない変幻自在な攻めや
終盤に見せた素晴らしいジャーマンスープレックスなど、
今大会の真壁自身のベストバウトといっていい内容をファンは支持した 。


ノーザンライト


素晴らしいジャーマンでした

それが表彰式に登場した真壁へのファンの歓声につながったのだ。
もちろん真壁の中には優勝できなかった悔しさはあったろうが、
彼の中になにかしらの満足感があったからこそ
あの時リングに上がったのだろう。

そこで表題の「人の子」に戻るのだが、
G1へのリスペクトが準決勝での闘い方に表れていたように見えた真壁。
いつもよりクリーンなファイトで紙一重の闘いに敗れた真壁。
そこで解説者がこう言っていたのが印象に残っている。

「真壁も人の子だったってことですねぇ」


今年のG1裏MVP
   
 
    
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