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12月15日   ワールドプロレスリング実況三銃士の闘魂コラム#56
〜アウト〜

「僕が見れば完全にアウトの状態ですよ」
長州は先日の10・8東京ドーム大会についてはっきりそう言った。
こちらの「アウトとはどういう意味か」という質問に
「ワン、ツー、スリー、でスリーカウント入っている、っていう意味ですよ」
と言った。スリーカウント・・・
新日本プロレスは負けたということなのか。


新日本プロレスの現場監督に復帰した長州力のインタビューに行ってきた。
正直言って行く前はビビッていた。
ディレクターは高校以来着たことがなかったというジャケットを着ていたし
自分も普段ははずしているシャツの第2ボタンを留めた。

夕暮れのリキプロ道場は異様な緊張感、張り詰めた空気に包まれていた。

そのリング上にあぐらをかいて自然体で長州力が存在する。
聞きたいことは山ほどある。どこまで答えてもらえるのか、
突然怒り出したりインタビューを打ち切られたりしないだろうか。
様々な不安を抱きながらインタビューは始まった。

その一部が冒頭の「アウト発言」である。
ゼロワンMAXとの団体対抗戦、ブロックレスナーが出場した
新日本史上初のIWGP3WAY戦。他の試合もいつも以上に盛り上がっていたし
前回より観客動員も増やした。10・8東京ドームに来た今回のお客さんの満足度は
ここ何年かのドーム大会の中では一番ではないかという位
よかったものだったと思っていた。
それでも長州から見ると「アウト」なのだという。

そして長州はこうも言った。
「リングで柱として君臨できるのは一人しかいない」
これを聞いたとき自分の頭の中にはかつてのアントニオ猪木が頂点だった頃の
新日本が思い浮かんだ。そして猪木に向かって行く長州の姿も。
さらに現状については
「みんな同じ高さの波に乗っているようにしか見えない」と表現した。
「誰か一人が一歩でも高いところにいれば俺の目に付くはずだ」とも。


長州力はかつてない大改革に着手しようとしている。
革命戦士はその刀の刃を錆びさせることなく研ぎ続けていた。
その改革の結果、どれだけの血が流されようと
彼はやり遂げる決心をした。その決意を見た気がする。

スリーカウント
負けから始まるのもまたプロレスの醍醐味ではないか。
   
 
    
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