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9月5日   ワールドプロレスリング実況三銃士の闘魂コラム#47
〜「百聞は一見にしかず」なG1〜

8月14日の両国国技館はこれまで味わったことのない
異様な空気に包まれていた。
G1クライマックスの決勝トーナメント、優勝決定戦が
行われるからなのだが、これまでのG1では感じたことのない
お客さんの期待感がそこには渦巻いていた。まさに
「渦巻いていた」という表現がぴったり当てはまるように思う。
空気の密度は間違いなく濃かったし、人が吐き出す
二酸化炭素やアルコールのほかにも何か別の未知の物質が
混ざっているような印象を受けた。

それが優勝決定戦での蝶野優勝へとつながっていくのだが
今振り返ってみると蝶野が優勝したのはあの空気が
彼を後押しした結果だとさえ思える。それくらいあの日の
両国の「蝶野コール」は凄まじいものだったし
僕も実況していて空気が彼に向かっていくのを感じた。

先月亡くなった橋本真也さんに捧げる優勝だ、とか
彼が見えない力で背中を押してくれたなど
人はさまざまなことを口にする。あの「現場」で試合を見て
いた人は同じ事を感じたかもしれない。
しかし僕の仕事は現場の興奮を、迫力を、テレビを通して
視聴者に伝えることだ。
あの現場の雰囲気を、興奮と期待感に満ちた両国の
空気を、少しでも伝えられただろうか。
答えは出ないし自問自答はこれからも続くのだが
一つだけ分かったことがある。
「プロレスは死なない」

   
 
    
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