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9月15日

10年目の取材メモ 「アメリカ遠征、そして、18歳の決断」
 

背番号1と2をつけた二人がベンチ前に出てきた。
早稲田実業・斉藤佑樹くんと駒大苫小牧・田中将大くん。
キャッチボールが始まった。

日本選抜とアメリカ選抜の最終戦・第5戦の試合開始直前。
先発する斉藤くんのボールを、
田中くんはキャッチャーミットをつけて受けた。
夏の甲子園、決勝戦2試合で死闘を演じた二人が、
ロサンゼルスの抜けるような青空の下、
ただ黙々と投げあう。
二人の絆の深さを目の当たりにした瞬間だった。

このあと、日本チームは斉藤・田中の黄金リレーで
最終戦を白星で締めくくった。

アメリカ選抜との5試合が終わって以降、
同行するメディアの関心は、がぜん斎藤くんの進路に注がれた。
確かに彼の気持ちは揺れていた。
進路に関する質問になると表情が曇った。

アメリカ選抜相手に自らのピッチングで得た手ごたえ、
現役メジャーリーガー松井秀喜選手との対面、
そして、明確にプロ入りを目指す田中くんらと寝食をともにした日々は、
彼に進学以外の選択肢もあることを気づかせたようだ。

迷っていて答えにくかったということももちろんだが、
家族に話す前に、メディアを通して
自分の考えが伝わることを避けたいという彼の思いも透けて見えた。
そういうことをきちんと考えていることがわかる青年だけに、
質問するのも気が引けてしまう。
しかし、プロ入りをにおわす言葉も漏らしているだけに
聞かないわけにはいかない。
「家族と相談して決めます」
きっぱりと言い残して、彼はアメリカを後にした。

帰国してから3日。
彼は「進学」という結論を導き出した。
そして、それは自分の意思であることも強調した。
田中くんとは違う道だった。

甲子園でぶつかりあい、アメリカで行動を共にした二人は、
またそれぞれの道を歩み始める。
異国の地でクロスした二人の人生。
その「青春のひととき」に立ち会った一人として、
これからも二人の動向から目が離せない。

   
 
    
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