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4月7日日曜日。夜9時過ぎ。スタッフルームから連絡を受け、自宅から埼玉県戸田市へ直行しました。
「アパートの押し入れの中から、6人の赤ちゃんの遺体が見つかった」
現場に到着した時点では、このくらいのことしか、わかっていませんでした。
いったい誰の子供なのか?
どんな人がアパートに住んでいたのか?
ご迷惑であることは十分に承知しつつ、近所のお宅のインターホンを押していく。
「赤ちゃんがいるような感じではなかった」
「6人くらいが住んでいた」
など、様々な話が出てきましたが、たいていの方から
「いつも見ているわけではありませんので、、、」
という言葉が聞かれました。
その結果、情報にはかなりばらつきがあり、はっきりしない点、さらなる疑問が次々に出てきました。
そう言われてみれば、近所にどんな方が住んでいるのか、きちんとわかっていないことに気付きます。自分自身も含めて、近所付き合いはますます希薄になってきているようです。
そんな中、現場アパート近くのお店で、あるおばあさんに出会いました。
食料品店を営む、70、80代のおばあさんは、私の問いかけに、驚くほど細かくわかりやすくにこたえてくださいました。
家族構成や、年齢から、引越しをした時期、容姿、近所づきあいまで、人々の様子が「動きとして」見えてきました。
お店の周辺の人々の暮らしが、映像として見えてくるような感覚にとらわれました。
長年お店を営むなかで、お店を訪れる人との交流があるのはもちろんのこと、お店の前を通る人々の表情、様子などが目に焼き付いていたのです。
いつも同じ場所から、周辺のコミュニティーを温かい目で見守りつづけていたのでした。
そのおばあさんは、「何とかして役に立てれば」という思いで、一生懸命にお話してくださいました。長年暮らしてきた街が、事件で大騒ぎになって、混乱していることを憂える表情が忘れられません。
お話をうかがいながら、「こういうお店は少なくなってきたなぁ」と寂しい思いがしました。
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