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『Smaクリニック』開始から2カ月…番組に寄せられた、医療事故や怒りの体験メールの数は実に1400を越えています。
その中でも取り立てて多いのが「婦人病」に関するもの。そこで、今回は「婦人病 vol.2」をテーマにおくります。
 女性のがんによる死亡者数は11万9000人。そのうち、乳がん・子宮ガン・卵巣がんを合わせた“婦人病のがん”による死亡者は全体のおよそ30%にも及びます。また、子宮に良性の腫瘍ができる子宮筋腫に関しては、30代の女性の4〜5人にひとりが発症するといわれています。宇多田ヒカルさんが卵巣の腫瘍を摘出したというニュースが話題になったことで、若い女性の間でも婦人病は「いつ発病してもおかしくない身近な危機」という意識が高まってきました。知らず知らずのうちに女性の健康を蝕む「婦人病」。その現状とは? そして早期発見のポイントや、正しい対処法とは?
 婦人病でも、特に恐ろしいのが乳がん。自分で早期発見するためには、しこりがないか触ってみたり、鏡で乳房の形がおかしくないか見てみたりするなどのチェック法があります。ところで、もし乳がんを早期発見した場合、どういう治療法があるのでしょうか。
 多くの人の中には「乳がん=乳房を取る」というイメージがありますが、決して治療法はそれだけではないんです。しかし、医師の中には、本人に相談もなく乳房を全部切り取ってしまうひどい医師もいます。その一例が大阪府の主婦・Mさんの体験。1998年、Mさんは胸にしこりが見つかったので、近くの総合病院で診察を受けることにしました。彼女の主治医になったのはその病院の院長。「ぜひあの先生に執刀してほしい」と患者が訪ねてくるほどで、「名医」と評判でした。しかしこの院長、実態はおよそ「名医」とは言いがたい、とんでもない医師だったのです。Mさんに対し、胸のしこりを手で触って調べる触診と超音波検査を行った院長は、超音波検査の映像を見せながら「これががん細胞。すぐ手術しないと!」と、いきないりがん告知をしたのです。突然知らされた乳がんという事実、そして手術という言葉に、Mさんはショックを受けました。やがて気を取り戻したMさんは、手術を受け入れつつも「できれば乳首は残してほしい」と院長に頼んだのです。これに対し、彼は「残したいが、最悪の場合は取らないといけない」と回答。そして手術の日を迎えたのです。本来ならば、手術の前にしこり部分の組織を採取して、がんかどうかを綿密に調べる「病理検査」を行い、その検査結果で「がんと判定」されてから手術を行うのが普通。ところがこの院長は、Mさんが手術室に運ばれた段階で初めて、病理検査の指示を出したのです。そして、検査結果は数十分ほどで出るにもかかわらず、その報告を待たずに、Mさんの乳房にメスを入れ始めました。30分後、病理検査の結果が出ますが、何と「がんではない」という判定。しかし院長はそれを無視して強硬に手術を続行。結局、Mさんの乳房をすべて切り取ってしまったのです。にもかかわらず、彼は手術後、Mさんの家族に切り取った乳房を見せて「これががん細胞です」と説明し、触らせることまでしたといいます。それから数日後、再びしこり部分の精密検査が行われましたが、結果はやはり「がんではない」というもの。院長ががんと診断したしこりは、ただ乳房が部分的に固くなっただけだったと言われています。しかし、その事実は患者側には知らされることはありませんでした。それどころか、カルテに貼り付けられていた検査結果の報告書の上に別の紙が貼られ、隠されていたというのです。
 正常な乳房を乳がんと誤診。さらに「がんではない」という検査報告を知っておきながら無視して乳房を全摘出。挙句の果てにカルテ隠ぺいの可能性…。これはもう、医療行為ではなく暴挙と言うほかありません。実はこの院長、過去にも乳がんと誤診して女性患者の乳房を一部を切り取ったことがあり、正しい検査結果が出るまで、抗がん剤を投与し続けていたといいます。事件発覚後「触ると固かったので、乳がんと診断した。患者には説明不足で申し訳なかった」と誤診を認めました。そしてカルテの隠ぺいに関しても「俺が貼ったんだろうな」と、あいまいながらも認めたといいます。『疑わしきは切る』という考えを持った医師も中にはいます。が、最近発表された過去20年にわたる乳がんの研究結果では、初期の乳がんに関しては、乳房を全部切るのと、がんの部分だけを切り取るのとでは、その後の生存率にまったく差がないことが分かっています。
 では、正しい診断結果を得るために、患者側にできることとは何なのでしょうか?
 婦人病、特に子宮や卵巣の病気は発見が難しく、医師にとっても診断が困難だと言われています。本当はトラブルがあってお腹が痛いのに、ただの生理痛と診断されてしまうなんてことも結構あります。ですから“婦人病かな?”と思って医師の診察を受ける時は、積極的にセカンド・オピニオンを受けることが大切なのです。婦人病の場合、セカンド・オピニオンによって初めて病気が発覚するケースが多く見られるようです。しかし、2人の医師の診断だけでは事足りないケースもあります。
 静岡県の主婦Tさん(41)は20代の半ばごろから、生理のたびに強い痛みを覚えるようになりました。その痛みは生理を重ねるたびに増す一方だったため、27 歳の時に近くの産婦人科で検査してもらうことにしました。が、医師の診断は「生理痛」。念のため、セカンド・オピニオンを受けましたが、やはり「生理痛がひどいだけ」と同じ診断を告げられただけでした。2カ所の病院で診てもらって「生理痛」という判断ならば、やっぱり生理痛なのだろうと、半ば諦めの気持ちで約1年間、痛みにこらえていたTさん。ところがある日、あまりの激痛に倒れてしまいました。そこで国立病院の産婦人科で検査を受けたところ、「チョコレートのう胞」と診断されたのです。「チョコレートのう胞」とは子宮内膜症という病気の一種で、卵巣の中にチョコレート色の血液がたまり、卵巣が腫れ上がり痛みを起こす病気。医師は「このままでは妊娠できません。すぐに手術が必要」と説明しました。Tさんは今後妊娠できるように、卵巣を残した形で悪い部分を切り取る手術を受けました。ところが2年経っても、まったく妊娠する気配がありません。不審に思い、ある大学病院で調べてもらったところ、チョコレートのう胞が再発して悪化。卵巣が内臓にくっついてしまっていることが分かったのです。医師の勧めに応じて、Tさんは再び手術を受けることにしました。しかし…。いざお腹を開けたら、卵巣は子宮や直腸とひと塊のようにくっついて剥がれず、手の施しようがなかったのです。結局、何も処置できないまま、お腹は縫合されました。そして手術後、医師から「このままでは妊娠できません。体外受精しか方法がないですね。うちでもこれから体外受精をやっていきますので…」と報告されたのです。その後Tさんは数回、体外受精を試みました。しかし成功には至らず、金銭的・精神的苦痛から現在は治療をやめています。
 さて今、20〜40代の女性を中心に患者が急増している婦人病があります。それが子宮内膜症。実は生理のある女性の10人に1人が発病するといわれている病気で、現代病のひとつと呼ばれています。15年前に比べると、病院を訪れる患者の数は約2倍に増えているというデータもあるほどですが、これほどまでに子宮内膜症を患う女性が増えた原因とは何なのでしょうか? 最大の原因は―――妊娠・出産の機会が減ったこと。もともと子宮内膜とは、妊娠に備えた子宮の内側にある膜のことをいいます。これが卵巣や直腸、膀胱など、子宮以外の場所に増殖し、生理のサイクルに合わせて出血を起こすのが子宮内膜症。生理がある限り、発生する可能性がある病気なので、更年期を迎えて生理が止まった女性は発病することはほとんどありません。また、妊娠して生理が止まっている時も発病率は低く、発病していても進行が止まったり、症状がおさまる場合もあるんです。しかし最近は働く女性も増え、結婚年齢・出産年齢が高くなると共に出産回数も減り、子供をまったく産まない女性も多くなってきました。その影響で、子宮内膜症は増加の一途をたどってきたのです。患者の約5割が不妊に悩んでおり、放っておくと炎症を起こしたり、患部と周りの内臓がくっついたりして、ちょっとしたことで激痛に苦しむことにもなりかねません。だからこそ、早めの発見と適切な治療が必要なのです。
<子宮内膜症の自覚症状チェックポイント>
1.生理の時のお腹の痛み
2.生理の時にレバー状の血の塊が出る
3.セックスの時の痛み
4.排便の時の痛み
5.生理時以外の下腹部の痛みや腰痛
<子宮内膜症の治療法>
1.手術
2.低用量ピル
3.偽閉経療法
など。
 次回の「看護師のホンネSP」を前に、今回は看護師の過酷な労働状況について少しお話ししたいと思います。
 日本の看護師はものすごく忙しくて大変だという話をよく聞きますよね。実は看護師だけでなく日本では医療者全体の数が少なく、特に看護師の数は欧米先進国に比べると、極端に少ないんです。夜勤の時など、40人の患者さんを看護師2人で診ている、信じられない!病院もたくさんあります。日本は病院の数が多く、人口比で見るとアメリカの約2倍の施設が存在しています。人件費の問題も含め、こうした様々な理由から必然的に一施設あたりの看護師の数が少なくなってしまっているのです。ですから、看護師が多忙になるのは当然のことです。しかし、これは医療の現場において大問題です。実際、治療の最前線にいて、患者さんに薬を投与したり、注射するのは看護師です。が、人手不足や過労を抱えての勤務ではケアレスミスやトラブルが起こりやすくなってしまいますよね。看護師の間でも増員を要請する声が上がっていますが、より安全な医療現場にするためにはスタッフの人数を増やすことが何よりも必要だと言われています。しかし悲しいことに、それが実現していないのが現在の日本の医療現場。では、私たちはどうしたらいいのでしょうか。まずは、患者さん自身も安全で十分な医療を受けるために、医療者任せにするのでなく「一緒に医療の安全を考える」…こんな気持ちを持って下さい。さらに「この現状を変えなければ」という意識を持つことも大切だと思います。そういう動きが少しでも増えれば、日本の医療も変わっていけるのではないでしょうか。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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