いつからか、寮生が結婚すると、皆でアルバムを贈るようになっていた。
それぞれが当時の写真を持ち寄って、メッセージを綴る。
どの写真を見ても、ルーズソックスに、短いプリーツスカート。
あの頃、“ボーイフレンドの通う学校の指定鞄を持つこと”が
一番のお洒落とされていたが、18時には揃って夕食をとる寮生には、
縁遠い話だった。
ダイエットスリッパの足音を忍ばせて、夜中にこっそりプリンを食べた。
献立がオムライスの日には、こぞって好きなアイドルの名前をケチャップで描いた。
目の前には、すっかり長くなった髪をまとめて、美しい花嫁が佇んでいる。
「あんなに寝起きが悪かったのに…こんなに血色が良くなって…」
寮生の一人がつぶやく。冗談めかして言ったのかと思いきや、涙ぐんでいた。
15歳だった私たちが、30歳。その間のあれこれは、今日は置いておいて。
パーティが終わると、誰が提案するでもなく、駅前の喫茶店にたどり着く。
「ねえ、ハンバーグ定食頼んでいい?」
「さっき散々食べたのに?」
オーダーを手早く取りまとめる人、メニューを凝視する人。
15年経ってもいつもの調子だ。
「…それにしても、幸せそうだったね」
来られなかった遠方の寮生に、夫婦の写真をメールで送る。
二児の母に考慮して、少し早めのお開きとなった。
「じゃ、またね」
「次は誰かな?」
何が起ころうとも、また、会える。 |