友人が、宝塚歌劇団を退団する。
宝塚市で過ごしたのは、中学生の時。
東京から転校してきた初日、
出席番号順でひとつ前の席に座っていたのが彼女だった。
高い位置できちんと束ねられたポニーテール。
豊かな毛先を、ふわりと揺らして振り返る。
大きな瞳で、いつも歌うように私を呼んだ。
家も近所で、よく一緒に登校した。丘の上の校舎まで、ゴルフ練習場を横切って。
制服のスカートを揃って短く折り曲げたり、指定ジャージのデザインを嘆いたり。
彼女のポニーテールを真似ようと髪を伸ばしてみたけれど、
猫毛の私には、到底似合うはずもなかった。
卒業して、彼女は地元の演劇科に進み、私は東京に戻った。
以来、宝塚へは一度も訪れていない。
歌劇団に入団したことを知ったのは、随分と日が経ってからだった。
幾度か東京公演を観に行った。
舞台の上の彼女は、いつでも光の中で強い意志を放つ。
ここが、私の場所。
全身で迷いなく表現する友を誇らしく思うと同時に、どこか気持ちがざらざらした。
自分には、言える?
ひどく不似合いなポニーテールを悟った時と、少し似ていた。 |