- 170cm
- 福岡県福岡市
- 日本女子大学附属高等学校→
日本女子大学 - 2001年4月1日
- 蠍座
岩礁が、ざあっと揺れる。
テレビの砂嵐かと見紛うが、一面のウミイグアナだった。
時折、ふしゅんっと鼻息を上げる。
赤道直下に点在するガラパゴス諸島。
隔絶された環境下で、独自に進化した生物が数多く生息している。
上陸する方法は船しかなく、
ナチュラリスト・ガイドと呼ばれる公認ガイドと共に、島々を巡る。
岩間には、ガラパゴスアシカの赤ちゃん。
巨峰のような瞳でつるりと一瞥すると、
大きなあくびをして、目の前で眠りについた。
海辺を抜けて、サボテンの森へ。
うちわのように丸い実が、空にぽこぽこ伸びる。
その下ではリクイグアナが、
好物が落ちてくるのを日がな一日待っている。
農場では、ガラパゴスゾウガメが草を食べにやって来る。
世界最大級のリクガメは、全長約150cm、体重約200kg。
肉厚の尻尾を丸めて、意外にもすたすたと歩く。
独自に進化した彼らには警戒心がない。
至近距離に近付いても、逃げることもない。
限られた環境で独自の進化を遂げたからこその、
自由さであり、無防備さだ。
島を去る朝。
砂浜を散歩していたら、彼方から灰色の影が近付いてきた。
何百羽ものカツオドリが、瞬く間に海上に停滞し、
魚の群れに向かって、くちばしの雨を降らせる。
その光景は、金子みすゞの詩と重なった。
カツオドリは、どこかへと去って行く。
やがて人間も弔われる。
進化の果てに。