- 170cm
- 福岡県福岡市
- 日本女子大学附属高等学校→
日本女子大学 - 2001年4月1日
- 蠍座
アナウンサーは、沈黙を恐れる。
放送中に5秒間黙ろうものなら、
反射的に「何か喋らなければ」と、言葉の引出しを総ざらいする。
先日、田原総一朗さんのラジオ番組を見学させて頂く機会があった。
スタジオに向かうエレベーターに乗ると、
前番組のパーソナリティを務める壇蜜さんの、とろりと甘やかな声が聞こえてくる。
その後、打合せを経て、生放送が始まる。
「こんばんは!直前までお隣で壇蜜さんが出演されていましたが、
田原さん、お会いしたことは?」
エレベーター内から、うすうす感じてはいたけれど。
社内全体に漂っていた彼女の魅力が、
番組冒頭のアナウンサーの一言で、ぽわんと電波に乗った。
「今度対談する予定ですが、まだ一度も…」
田原さんが言い終わるや、隣のスタジオから、
生放送を終えたばかりの壇蜜さんがすすす、とやって来た。
無言のまま、それぞれの番組のディレクターどうしが目で合図を送り合う。
「(スタジオに入っても)いい?」「どうぞ!」
「ごめんなさい、私のスケジュール調整がままならなくて…」
そして、まさかのご本人登場。
「いえいえ、お忙しいでしょうから」と、驚きつつも恐縮する田原さん。
「あら…。いざとなったら、私が一肌脱げばいいですか?」
かぐや姫の様な黒髪をたくしあげて、じっと見つめる。
う、うつくしい。
あれ。
田原さんの耳が、ほんのり赤い。
カメラマンであれば、そのわずかな変化を撮り逃さないだろう。
ただ、この場はラジオ放送である。
映像で伝えられない時、果たして―。
色彩、におい、肌ざわり。
全てに、言葉を重ねる?
重ねられる?
私が一肌脱げばいいですか―?
その後のスタジオの沈黙は、
周波数帯域の無数の耳を涼やかに染め上げる。
言葉を脱ぐ。
敢えて黙る。
あれもこれもと着膨れするのは、蒸し暑い。
オンエア後、文化放送の吉田涙子アナウンサーと